AKAMINE BLOG

メンズファッションディレクター 赤峰 幸生のBLOGです。

2009年12月06日(日)

MEN'S EX 1月号 平成の寺子屋 赤峰幸生の上級ファッション塾 連載vol.13 [MEN'S EX 掲載記事]

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「ワンランク上のウールコート選びを教えてください」

真のクラシックを追求し、服のみならず、生き方そのものに自らのスタイルをもつ男、赤峰幸生。
氏が考える、男のお洒落を伝授する連載。第13回は、「ウールコート」。ワンランク上の選び方とは?




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■回答1■
コートのデザインで遊びを入れ色みはシックにまとめます
ドーメルのヴィンテージのスポーテックスで仕立てたリヴェラーノ&リヴェラーノのスーツ、ホーランド&ホーランドのタイ、アカミネロイヤルラインのブロードシャツ、ジョン ロブの靴、デンツのグローブ、ロキャロンのマフラーという合わせ。コートのデザインそのものはスポーティですが、シックな茶系でまとめ、色数を絞っているので、とてもエレガントな印象です。「デザインで遊ぶときは、色はシックにまとめます。足元は今の気分の茶スエードの靴。ベルトももちろん、茶スエードです」

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色数を使うときは上着の色柄を拾います
コートの中も色合わせを。「ガンクラブチェックのスーツはいろいろな色が入っているので、茶系で合わせつつもその中の色を拾ってあげると、何色か使っていても美しくまとまります。コートを脱いだときに色みが揃っていると、エレガント!」

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■回答2■
スタンダードなデザインのコートを素材で選びます
ダッフルコート用のヘリンボーンウール生地で仕立てたコートとフランネルのスーツはリヴェラーノ&リヴェラーノ。「デザインはベーシックですけど、素材で少し遊んでみました」。シャツはアカミネロイヤルライン。マリネッラのタイ、シャルベのチーフ、ニュー&リングウッドの靴、デンツのグローブに、ロロ・ピアーナのマフラー。

■デザインもしくは素材のどちらかで少しの遊びを!
赤峰  ウールのコートといえば、基本はチェスターフィールドやバルマカーンになりますが、そのままもってくるのはあまりにフツウなので、今回は進化させたベーシックをテーマに考えてみました。
M.E.  確かに予想外のコートでした。
赤峰  控えめなんだけれど違うよねっていう感じにまとめたんですけど、読者の皆様にそれが伝わっていると嬉しいですね。
M.E.  伝わっていると思います。メインの茶のコートですけど、見たことない形ですね。凄くカッコいいです。
赤峰  '50年代の英国のヴィンテージで、乗馬用のライディングコートを進化させたものです。ダブルフェイスのウール素材で、クローバーカラー、スラントポケットになっていて、シンプルなんだけれどちょっと違うっていうのを合わせたつもりです。色みはあくまでベーシックに、全体のトーンを合わせたのがポイントかな。
M.E.  もうひとつのほうは?
赤峰  ダブルブレストのコートですけど、実はこれ、ダッフルコート用の生地で作ったものなんです。スポーティなダッフル用のヘリンボーンをドレスの世界の中でクラシックな形に落とし込んでいるのがポイントです。グレイのスーツを軸に無彩色でまとめ、単に堅いブリティッシュではなく、赤峰的進化の表現を試みました。
M.E.  ともにきれいにまとまっていますが、合わせる際のコツを教えてください。
赤峰  まずは色数を極力絞ることです。最初にハンガーにかけて合わせてみるといいでしょう。靴下、ベルト、靴も入れてあげると理想的です。その際スエードの靴にはスエードのベルトを合わせるべきですし、コートにはグローブが必須です。紺の無地もいいですけど、あまりに普通なので、素材感かデザインでヒネリを入れるといいでしょう。ちなみに黒のコートはお葬式のとき以外着ません。お通夜でも着ないですね。
M.E.  なるほど。では、最後にひとこと。
赤峰  ドレスのコートで裾捌きがペラペラしているのは、個人的には好きではありません。いつも言っていますが、ウエイトがあって縦に生地が落ちている感じのものを選ぶことをオススメします。

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2009年11月19日(木)

服の立ち位置【自然の色に溶け込む】 [朝日新聞掲載記事]

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朝日新聞(東京本社版夕刊)に2009年11月19日付けでファッションコラム連載『服の立ち位置(自然の色に溶け込む)』が掲載されました。

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2009年11月06日(金)

MEN'S EX 12月号 平成の寺子屋 赤峰幸生の上級ファッション塾 連載vol.12 [MEN'S EX 掲載記事]

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「5ポケットパンツを大人っぽく穿く方法を教えてください」

真のクラシックを追求し、服のみならず、生き方そのものに自らのスタイルをもつ男、赤峰幸生。
氏が考える、男のお洒落を伝授する連載。第12回は、「5ポケットパンツ」。大人っぽく穿く方法とは?


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回答1
リーバイスのヴィンテージに上は上品なヨーロッパのアイテムを合わせます
ヴィンテージのスエードブルゾンにセントジェームスのバスクシャツ、リーバイスの501XX、フローシャイムのコブラヴァンプという合わせ。「ジーンズとセントジェームスの組み合わせ、それにスエードブルゾンを合わせるのは、私の定番です。上にアメリカものを合わせるのではなく、ヨーロッパのアイテムでまとめているのがポイントです。袖口のリブのヨレ感、程よく色落ちしたジーンズとの合わせがとても気に入っています」

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靴と靴下の色合わせはカジュアルで必須!
何気ないスタイルですけど、靴下は靴との色合わせがされています。「靴下の色を軽く見てはいけません。脚を組んだときに見えるからです。お洒落は足元からといいますが、お洒落は靴下から。ジーンズのときこそ、こだわりたいですね」

■ジーンズはドレスマインドで合わせます
赤峰  5ポケットパンツの代表といえば、まずはジーンズ。アメリカ的なアイテムゆえ、スニーカーと合わせてしまいがちですけど、赤峰的にはドレスな気分で合わせるのが、ジーンズをコーディネイトするときの基本です。アメリカ的な合わせをしてしまうと、だらしなく見えてしまいがちなんですよね。ジーンズというアイテムを、普段穿いているグレイのフランネルパンツと置き換えて考えてみたり、ドレスコードの中においてどう位置付けるのか、そこが基本になります。
M.E.  なるほど。その中で先生の定番パターンはあるのですか?
赤峰  合わせにいくつか自分のパターンがあって、今日でいうとセントジェームスのボートネック、マリンニット、ドレスシャツ、スエードブルゾンなど、いくつかの定番はあります。ジーンズはヴィンテージの風合いが好きで、コーディネイトでヨーロッパのヴィンテージと出会わせてあげるのが好きなんです。
M.E.  なるほど。次にサイズとシルエットのお話です。パツパツなものはあまり穿かないだとか、いろいろルールがおありと思うのですが、赤峰さん的シルエットの黄金バランスを教えてください。
赤峰  ジーンズのシルエットは、まず裾幅のバランスが大切です。ブルージーンズの場合、18〜18.5cmが基準ですね。裾幅が太いものに関しては、お直しに出して裾幅を詰めてしまいます。あとワタリですが、比較的ゆったりしているものが好きですね。全体的にパツパツでただタイトであればいいというのは、赤峰的にはあり得ません。それとジャケットやブレザーを合わせるときは、ワタリにややゆとりがあるものを選びます。ワタリが細いとジャケットとの連続性がなくなってしまうからです。個人的にはリーバイスの505あたりがちょうどいい塩梅で好きですね。
M.E.  なるほど。ジーンズの裾幅を細く直して穿く先生のやり方は、日本ではさほど浸透していませんが、確かにイタリア人の間では一般的ですよね。

 
■色使いはMAX3色まで極力絞り込むのがコツ
赤峰  そうですね。みんな結構直して穿いています。それと合わせ方にもコツがあります。上の分量を大きく見せる考え方と、下を大きく見せる考え方の、2つの方法があります。ブルゾンの場合は上をタイトにまとめるのが基本ですし、黒白のバッファローチェックの合わせなんかは上をたっぷり見せるように着ています。カジュアルの場合、どちらかにボリュームを持ってくるのがポイントですね。
M.E.  色使いもご教授願います。
赤峰  マックス3色。白はOKとして、ブルージーンズの場合、プラス1色でどうまとめるかを考えて着るといいと思います。色を使いすぎるとどうしてもチグハグな印象になってしまいますからね。
M.E.  それと今回気になったのが、コーデュロイパンツが多かったこと。実際、普段もよく穿かれていますよね。
赤峰  かなりの本数を持っていますし、実際年間を通して穿いています。ブルージーンズよりもシワになりにくいのと軽くて穿きやすいんですよね。ただし、ほとんどが色の薄いパンツです。選ぶ基準は白のシャツが映えるかどうかなんです。下に濃いものを着ると下の分量が重くなって上の存在感がなくなってしまうんですよね。だから自然と、上は濃いめ、下は薄めの合わせが多くなります。
M.E.  なるほど。
赤峰  セットインもありますけど、基本はラグランです。ラグランのコートは二の腕が太いのがカッコいいですよね。ただ、国によって違っていて、フランスは鎌が高くてナローにできているんですけど、これはこれでまたいいんです。あと、ここ近年、気になる色感というと、ミルクティーカラーですね。ミルクティーのように牛乳の色がいっぱい入っていると薄いベージュになりますし、少ないと茶色になります。茶からベージュ系のグラデーションで全体をまとめ、これをブルーに組み合わせても非常に相性がいいので、覚えておくと便利です。
M.E.  今回も4コーディネイトがそれにあたりますね。覚えておきます。ありがとうございました!
 
 

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(←)回答2
ブレザーを合わせるときはジーンズのワタリによりゆとりを
イザイアの信濃屋別注ブレザーに、ボレッリのシャツ、リーバイスの501。「ジーンズに合わせるブレザーは、金ボタンが基本。ノータイのときは襟腰の高いドレスシャツでアクセントをつけ、ワタリにゆとりがあるものを選ぶのがポイントです。色も濃いめできれいめに。スエード素材のサイドゴアとベルトで洒落感を出しました」

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(→)回答3
コーデュロイパンツを使ってミルクティー系の色合わせ
ウールリッチのヴィンテージのチェックシャツに、リガッティの白のコットンツイルシャツ、リーバイスのコーデュロイ、ニュー&リングウッドのスリッポン。「赤茶で秋の色を表現しました。コーデュロイパンツに合わせ、シャツのチェックに薄いグレイが入っている点、下に白のドレスシャツを合わせているのが赤峰流です」

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(←)回答4
濃色系ジャケット+オフ白パンツなら上品に
700g/mくらいあるメルトンのコート地で作ったリヴェラーノのジャケットに、シャルベのギンガムチェックシャツ、アカミネロイヤルラインの三段レジメンタル、サテンのリーウエスターナー。「これも今の気分のミルクティーカラーです。チープに見える中でのシックさを表現しました。ドレスシューズではなくスニーカーで」

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(→)回答5
コーデュロイ×マリンニットで冬のフレンチトリコロール
ヴィンテージのマリンニット、ラコステの赤の長袖ポロ、サックス色のリーバイスのコーデュロイ、コンバースという合わせ。「ウインターマリンルックですね。冬の中のトリコロールをさりげなく表現しています。マリンニットのボタンをさりげなく外してポロの襟を立てているのがポイント。この上に着るとすれば、Pコートですね」

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(←)回答6
薄色コーデュロイでトップスを引き立てます
ベミジのCPOジャケット、信濃屋の赤の半袖カシミアポロ、リーバイスの白のコーデュロイという合わせ。「赤、黒、白という3色で合わせた表現ですね。コンテンポラリーな色の合わせをベーシックなアイテムでコーディネイトしました。これは上にボリューム感を持ってきたもので、近所に出掛けるときなんかは、こんな感じです」

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(→)回答7
ベージュ×グレイ×白の合わせで全体をまとめます
レクレルールのスエードブルゾン、バランタインのカシミアニット、Y.アカミネの白シャツ、リーバイスのコーデュロイ、マンテラッシのスリッポンという合わせ。「グレイとベージュ、ベージュと白は本当に相性がいいんです。この色&アイテム合わせは私の大定番。ベージュ系のコーデュロイは知らざれる万能アイテムで重宝しますよ」

今月のおさらい

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 ジーンズスタイルはドレスマインドでヨーロッパ系と合わせるのが基本
 ジーンズの裾幅は18〜18.5cm、ワタリ幅にゆとりがあるものが◎
 軽くシワになりにくいコーデュロイパンツは重宝。薄色を選ぶのが赤峰的セオリー

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2009年10月24日(土)

OCEANS 12月号連載 AKAMINE STYLE 目覚めよ、日本の男たち! [OCEANS掲載記事]

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マエストロ赤峰の「オトナ相談室」
仕事、家庭、子育て、そして愛……などなど。
30〜40代のオーシャンズ世代にもなれば、少なからず何かしら悩みのタネは持っているもの。
そんな皆さまの“駆け込み寺”として開設されたのが、このオトナ相談室。
この2年間、皆さんのにお答えしてきたのはのは“人生のマエストロ”こと赤峰幸生氏。
愛情たっぷりのマエストロのエールは、皆さまの心にどれだけ響いたでしょうか。
そして、今月はその25回目にして、な、な、な、なんと最終回っ!
そんなわけで、皆さんご一緒に!ありがとう、マエストロ!


今月のテーマ
“格好いい生き方”〜最終回〜

[今月の質問]
赤峰さん、いつもお世話になっております。オーシャンズの編集長・太田です。今回をもちまして、3年間続いたマエストロの連載にひと区切りをつけることになりました。創刊当初は装いの“粋”について教わる趣旨の連載でした。しかし、読者の皆さんはマエストロの人間性に深く興味を持ったようで、いつしか個人的な悩み相談のハガキが届くように。こうして、現在の「オトナ相談室」へと発展。マエストロには、毎月ありがたいお言葉とともに悩める読者を勇気づけていただきました。この場を借りて、御礼申し上げます。大先輩からいただいた“名言”の数々は、生涯忘れません。最終回となる今月は、僕らにいつも見せていただいた、その“格好いい生き方”についてぜひご教示いただけないかと思っております。(37歳・オーシャンズ編集長・太田祐二)

 
 

Q.いやぁ〜、格好いい生き方ですか。そういえば、マエストロの言葉にはいつもそう思わせる力がありました。そして、僕らはそのたびに、うっとりとしたもの。だけど、現実を見れば世の中は大不況。時節柄、格好よく生きるなんて土台無理な理想話じゃないっすか?
 この大ばか野郎がっっっ!!今までキサマに言ってきたことをもう忘れたのか?まさに馬の耳に念仏。お前には結局何も伝わらなかったということか。格好よく生きる。この根底を支えるのは、これまで何度も述べてきた「ゼロベースの精神」である。これを貫けば、不景気なんぞ屁でもないはずだ。不況自体は恐れるに値しない。ただ、本当に怖いのは不況によって、今までのあらゆる基準や価値観の変化を、従来よりも劣ってしまうと錯覚してしまう人間の性根である。収入、食事、服、住居、その他あらゆる嗜好品・・・・・。これまで、当たり前のように享受してきたものがそうでなくなってきた。しかし、よくよく考えてみろ。それは本当に生きるために必要なものなのか?果たして、自分の内面を本当に豊かにするものなのか?まずは、すべてを見直してみることだ。もし、それが見栄や贅沢、あるいは周囲や世間に対する面目や体裁にとらわれているだけであるならば、この大不況は自分の生活にこびりついたアカを落とすまたとない機会である。己の心を満たす基準や価値観を、何かと比較して作ってはいけない。それで一喜一憂しているなんて、格好いいわけがないだろう。己の五感を研ぎ澄ませ。そして、何事にも自分だけの絶対的な物差しを持って向き合っていくべきだ。格好いい生き方には、既成の概念など無用の長物である。
 かくいう私は、常にゼロベースの精神でやってきた。お金があればパッと使うし、なくなったら使わない。カードも使わないし、借金もしない。身に着けるものは上等のものを選ぶが、それは長く使うため。所有する数も最小限だし、流行に流されないものを選ぶ。仕事もそう。もし、自分が経営している会社にもしものことがあるとしよう。私は翌日から何のためらいもなく、20代のころのように、服を売るために日本中を這いずり回るだろう。ただハイエースが1台あれば、何も必要ない。私にはその覚悟がある。行住坐臥、こんなふうに過ごしていれば、不況などまさにどこ吹く風である。ゼロベースの神髄とは、あればあるなり、なければないなり。己の身の丈を真に理解すれば、その道に敵はない。

Q.何物にも左右されない。そして、常に初心を忘れない。これぞ赤峰イズムの真骨頂!武士道に通じるものがあります。ただ、僕ら現代の武士にとって、刀は何よりも見てくれが大切!格好いい生き方には、やはり格好いい刀が不可欠ですものね?
 このスカタン野郎が!お前は最後の最後まで聞き分けのないすっとこどっこいだ。刀は見てくれが命だと?ふざけやがって。きらびやかな装飾が施されていても、切れない刀であれば何の意味もないだろうが。見てくれはボロでも構わない。大切なのは、その切れ味。体裁ばかりにこだわった武士の帯刀は、中身のない男と何ら変わりがない。その虚栄心を捨てなければ、格好いい生き方など永劫叶わぬと心得てほしい。
 今日、ブランドものをこれ見よがしに身に着けたり、ひけらかしたりする奴は、性根が臆病者だ。そもそも心も経済的にも充実している人間が、見栄を張る必要があるか?何かに不安があるから、小手先で羨望を集め安心を得ようとする。そんなのは、大の男がするもんじゃあない。ものをひとつ買うにしても、銘柄や値段にとらわれるな!必ず己の物差し、つまり心に響くホンモノを選ぶこと。これが人生を豊かにし、格好いい生き方の下地となるはずだ。己が定め、己が認める絶対的な基準。格好いい生き方を実践するためには、これが最低にして最高の条件となる。男は見た目よりも中身なのである。
 

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(→)マエストロは自他共に認める仕事好き。「赤峰幸生」を作る仕事場は、いったいどんな場所?そんな疑問から、今月はマエストロの仕事場をこっそり覗き見・・・・・。すると、この日もせっせと仕事に精を出す姿をキャッチ!早朝にもかかわらず、スーツの原料といえる生地を黙々と眺めているではありませんか!「一日のうちで朝の光が最も透き通っている。だから、生地の良し悪しを見極めるにはこの時間帯が理想」。そんなふうに語るマエストロの目は、まるで大志を抱く若きビジネスマンそのもの。取材陣一同、終始感心させられっぱなしでした。今月で連載はひと区切りをつけますが、今後とも“格好いい生き方”をご指導いただく大先輩としてよろしくお願いいたしますっ!

Q.ひょえーっ!男は中身!やっぱりマエストロのトークは、切れ味が抜群です!それに、いいものを見抜く眼。これって相当な眼力がないと難しいんじゃないですか?
 心を豊かにしてくれるものを見抜く方法。それは美意識のみに頼ったものにあらず。私は、靴下一足買うにしても、そのものが完成するまでに費やされた時間と手間に思いを馳せる。ブランドネームなど一顧だにしない。作り手の熱意や誠意が伝わってくるものを買う。合理性や利益のみを追求した掛け算の仕事ではなく、じっくり積み上げられた足し算の仕事。これには専門的な知識など必要ない。ひとつのものをじっくり見れば、誰にでもわかるはずだ。
 これは、何も買い物だけに限った話ではない。今、世の中は「安い」「早い」「便利」ということに、異常な価値が置かれている。聞くところによると、最近の若者は映画館にも行かないし、酒場にも行かないという。酒は家でダラダラと飲んで、映画はソファにゴロゴロと寝転びDVDを観るというのが、主流になりつつあると聞く。そんな輩が本当に多いのであれば、これは大いに嘆かわしいことである。
 映画館には映画の味を高める雰囲気があるし、酒場には酒場にしかない酒の匂いがある。吉行淳之介に「街角の煙草屋までの旅」という名エッセイがあるが、それこそ近所をぶらぶら歩くだけでも、自分次第で一度の旅に負けないくらい想像力を掻きたてられるものになるのだ。こうした機敏を味わうことが心を豊かにする。
 最近は「ラグジュアリー」という言葉をよく耳にする。しかし、このラグジュアリーという言葉は、使う人によって趣が異なる、実に意味深長なものだ。今のメディアを見ていると、ただ価値が高いことだけがラグジュアリーであると言っている気さえする。由々しき問題を通り越して、情けなくなってくる。
 私は「ラグジュアリー」とは、すなわち「時間」であると考える。すべてが高速化・合理化していくなかで、丁寧に料理されたものを食い、誠実な仕事がなされた道具を使って暮らす。イタリア語で言う「ファット・ア・マーノ」(手づくり)の精神。こういったものに囲まれた生活には、お金では決して買えない、心の贅沢がある。

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Q.な、ななるほど〜っ!相変わらずマエストロの人生訓は尽きませんねぇ〜。では最後に、読書の皆さんにひとつ檄をお願いします!
 この2年間、たくさんの読者の悩みに触れてきた。悩んでいる内容も実に多彩。些細なこともあれば、思わず唸ってしまう深い悩みもあった。そう、生きることは本当に難しいことだらけ。では、どう生きるべきか。私もいろんなことを言ってきたが、人生とは何であるかを、今もってわかっているわけではない。
 ただ、ひとつ確かなのは、「心の声に耳を傾けろ」ということだ。人生を左右する決断の時、危機に陥った時、私は一度深く呼吸をし、自分がどうしたいのか、心に耳を傾けた。そして心の赴くままに正直に行動した。もちろん、間違ったことも損をしたこともあった。しかし、後悔は一片もない。私は小さいながらも会社を経営しているが、そんなものはただの結果でしかない。心の声に正直に生きることができれば、一文無しで、どこで何をしていようと、後悔など決してしないだろう。
 もし今、行き方に悩んでいるなら、今一度、考えてほしい。周囲や誰かの価値観に頼ってなんとなく生きていないか?体面や見栄で生きていないか?思い当たる節があれば心の声を聞いてみてほしい。悩みの解決の糸口が、見えてくるはずだ。
 文豪・井上靖は、晩年に「生きる」という作品を残している。ガンで生死の境をさまよった彼自身が、奇跡的に退院し、自宅で小さな庭を眺めていた。そこで木の枝や葉から地面に落ちる木漏れ日を見て、「俺も生きよう」と決心する。彼はその風景を小さい生命の音楽と表現した。
 生命が喜びの声を上げる瞬間。皆さんにも、そんな瞬間があるだろうか。私はある。手塩をかけて作った服を、客が喜んでくれたとき、私の心には歓喜の音楽が流れる。生とは素晴らしい、と。人生は厳しいことだらけだが、たまにはそんな瞬間があるから、生きていけるのだと思う。
 皆さんもそんな生き甲斐を見つけて“格好いい生き方”をしてほしい。不器用だっていいではないか。己の道を愚直に突き進むのだ。そうすれば、誰もがうらやむ男になるはずだ。
 では、いつかまた会う日を楽しみにしているぞ。
 
 

「ばか野郎っ!」って何回言われても、これだけは忘れちゃいないよ!
−マエストロの“名言”語録−

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●風呂場で素っ裸になって、肩書きや立場にとらわれずに見ず知らずの人と世間話ができる男になれ
2007年11月号「ジェントルマン」より

●「イイ女」を見分けたいなら、相手の目を見ろ。なぜなら“目”は化粧ができない。飾ることができないのである。
2007年12月号「女」より

●「水を飲む人は最初に井戸を掘った人のことを忘れるな」
2008年1月号「仕事観」より

●生きることにローギアを入れろ。トップギアで走ろうとするな。
2008年2月号「常識のズレ」より

●男の服は“薄口の味”で勝負するべきだ。
2008年3月号「男の審服眼」より

●「和の魂」で「洋を装う」、これが「和洋折衷」である。
2008年4月号「今どきアメリカン」より

●リーダーには大儀が必要である。
2008年5月号「上司の大義」より

●子供の目線で子供から学ぶ姿勢を持て
2008年6月号「父と子」より

●「品格」のある人とは、人に生かされていることを知っている。目の前の茶碗のごはんにありがたみを感じることができる。
2008年7月号「日本人の品格」より

●いつも親のほうを向いて生きよ。彼らとの絆を感じて暮らすのだ。
2008年8月号「最高の親孝行より」より

●今の「便利な幸せ」と昔の「便利ではない幸せ」これを両立させることが大切だ。
2008年11月号「感動力の高め方」より

●色彩感覚のセンスを高めるために「自然の色」を心して見よ
2009年1月号「芸術鑑賞のすすめ」より
注※夜の盛り場のネオンのような人工的な色を見ても、色彩感覚のセンスは養えない。身の周りにある自然の色こそが、本当に美しい色であるということ。


●格好よさを生み出す源は、あなたの“生き様”にある。
2009年3月号「格好いい男」より

●他人の褌で相撲をとらず、己がぶら下げている。“玉”の質で勝負しろ。
2009年4月号「褌」より

●20代はアリになれ、30代はトンボになれ、40代になったら仕事をしろ
2009年5月号「悩み力」より
注※20代はアリのように地面を這い回り、仕事の基礎を覚え足腰を鍛える。30代はトンボのように飛び、広い視野という複眼で世の中のあり方を見つめる。そでができれば、40代でホンモノの仕事ができるということ。

●男なら「往くは小道に寄らず」である。
2009年7月号「先人の言葉」より
注※注王道とは何かを常に探し、考え、その道をただ真っすぐに突き進むということ。

●昨日の常識は今日の非常識。
2009年9月号「個性の高め方」より

●人を口説きたいと思うなら、まず己を口説け
2009年10月号「男の口説き方」より
注※人を口説くというのは、まず己がそのコトやモノに対して納得できていなければならない。己を口説くとは、自分が本当に納得できているかを問う作業であるということ。


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2009年10月22日(木)

服の立ち位置【茶色で広がる靴の楽しみ】 [朝日新聞掲載記事]

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朝日新聞(東京本社版夕刊)に2009年10月22日付けでファッションコラム連載『服の立ち位置(茶色で広がる靴の楽しみ)』が掲載されました。

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赤峰 幸生 (あかみね ゆきお)

● イタリア語で「出会い」の意のインコントロは、大手百貨店やセレクトショップ、海外テキスタイルメーカーなどの企業戦略やコンセプトワークのコンサルティングを行う。2007年秋冬からは『真のドレスを求めたい男たちへ』をテーマにした自作ブランド「Akamine Royal Line」の服作りを通じて質実のある真の男のダンディズムを追及。平行して、(財)ファッション人材育成機構設立メンバー、繊研新聞や朝日新聞などへの執筆活動も行う。国際的な感覚を持ちながら、日本のトラディショナルが分かるディレクター兼デザイナーとして世界を舞台に活躍。 Men’s Ex、OCEANSに連載。MONOCLE(www.monocle.com)、MONSIEUR(www.monsieur.fr)へも一部掲載中。

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