2013年08月05日(月)
MEN'S EX 2013年9月号 赤峰幸生の「服育のすゝめ」 vol. 9 [MEN'S EX 掲載記事]
TPO別粋≠ネ装いそのB
『休日スタイル、どう装う?』
今回のテーマは「カジュアル」。といいつつ、「カジュアル」という言葉があまり好きではありません。私にとって、装いの根幹にあるのはドレスアップ。それを寛いだシーンに相応しくアレンジしたものが休日着なのであって、「カジュアル」という独立したスタイルがあるわけではないのです。たとえポロシャツにジーンズといった休日の典型的スタイルでさえ、ドレスマインドで着こなせば大人らしいエレガンスが漂います。それこそ、大人の粋≠ネ休日の装いといえるでしょう。これが、私が声を大にしてお伝えした装いの基本姿勢です。
赤峰流の休日スタイルはラコステなしには語れない
さて、そのようなドレスマインドで装う休日着♀礎を私の中に形作ったのは、若い頃に観た往年のヨーロッパ映画です。『太陽がいっぱい』『8 1/2』『太陽の下の18歳』・1960年代に公開された映画のなかには、海辺のリゾート地でひと夏を過ごすフランスやイタリアの人々の粋な装いを見ることができます。ヨーロッパの服装文化には、エレガンスにあふれたドレスマインドが息づいているのです。ですから私の休日スタイルは、ヨーロッパ流のリラックススタイルと言い換えて差支えありません。
そんなヨーロッパ流の休日着において、基本中の基本といえるのがラコステのポロシャツです。たとえばイタリアなどを歩いていると、洒落者のポロシャツは必ずといっていいほどラコステ。もちろん他ブランドのポロシャツも認知されているのですが、それでも皆こぞってラコステを選んでいるのです。というわけで、私にとってもポロシャツといえばラコステ。定番色から赤や黄色など色鮮やかなもの、海外製のメランジカラーなど、数え切れないほど所有していますが、今回は大人の品を表現するものとして、リブの長袖をおすすめしておきます。基本の着方は、袖を少しまくりあげて着る装い。長袖のポロを一枚で着るなら、襟ボタンを全部留めてお坊ちゃん≠ネ雰囲気で着るのも面白いでしょう。パンツはオフ白の5ポケット。それに足元はエスパドリーユ、もしくはスペルガなどクラシックスニーカーというが、私の定番的な着方です。ビーチサイドのリゾートシーンならパンツを水着に替えて、ジャケットを羽織る装いもエレガントで気に入っています。
アメカジなスタイルは苦手なのですが……
ドレスマインドを根幹とするヨーロッパスタイルの対極にあるのは、アメリカ流のカジュアルスタイル。これはどうにも苦手です。Tシャツやアロハなど、アメカジ的なアイテムは全く着ません。ただお断りしておきたいのは、アメリカ服そのものが嫌いというわけではないということ。リーバイス、リー、コンバースなどは大好きなブランドです。それらをヨーロッパ的目線で着るところに、休日の粋≠感じるのです。
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朝日新聞be on Saturday " 赤峰幸生の男の流儀 『シャツの腕まくり』 2013年8月3日(土)掲載" [朝日新聞掲載記事]
暑い季節の装いの主役と言えるシャツ。今回は、粋な着こなしについてお伝えします。
男性のスタイルが何となく決まらない場合、問題はサイズ合わせにあることが多い。サイズが大きいと、シャツの肩のラインが、腕の方に落ち込んでしまいます。小さいサイズも試し、肩がぴたりと合ったものを着るとスタイリッシュに見えます。
シャツでは、台襟の高さも印象を大きく左右します。西洋では、一番上の台襟ボタンの位置が高く、首を覆うことが大切に考えられています。一方、日本は和服の着合わせの文化もあり、ボタン位置が低い方が楽だからと、どんどん下がっていった歴史があります。ここが下がりすぎるときちんと見えないことに注意してください。台襟が4センチほどあるといいでしょう。
そして、上着を脱いだ時のシャツ姿を粋にきめるために、意識して頂きたいのが腕まくり。活動的で、見た目にも涼やかです。袖のカフス幅に合わせて折り込んで、七分丈でも、五分丈ぐらいにしっかりまくってもいい。袖口のボタンを留めたままでは、格好良く見えません。
さらに、シャツの下に着る下着は見えないことが大切です。ネクタイをしないのなら、首ぐりが深いものを選びましょう。
ノーネクタイの時にお薦めしたいのが「襟のロールアップ」のテクニック。襟の中に仕込まれたキーパーを外して、ピンと張った襟に指で内向きのカーブを付けてやる。すると、襟にいい表情が出ます。
襟や袖口の色が異なる「クレリックシャツ」を好んで着る男性がいますが、もともとアイロン掛けが大変だった時代に、襟を取り外せるのが実用的だったから生まれた形状です。色使いの面からは、少々難しいアイテムだと心得てください。
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2013年07月24日(水)
朝日新聞be on Saturday " 赤峰幸生の男の流儀 『リネンを味わう時代』 2013年7月20日(土)掲載" [朝日新聞掲載記事]
前回は真夏のジェントルマンスタイルのために、リネンの活用についてお伝えしました。この夏は、リネンで作られた服を手に取る人が少なくないと思います。味わいを感じさせる素材が、いま再び注目されているのです。夏の暑さがひどい昨今、高温多湿な日本の気候にあった織物として、見直されている面もあるでしょう。
リネンと言えば、しわです。カチッとしたビジネススーツと異なり、しわになるから麻はいい。緩やかな気分になり、綿とはまた違う良さがあります。生地こそが、まとう喜びをもたらす源泉だと教えてくれる素材でもありましょう。
原料としては、ベルギーや北フランスでとれるリネンがよいとされています。よい生地はどんな素材でも同じですが、繊維が細くて長いものが、上質な服地に生まれ変わるのです。
そして織るのはアイルランドや日本が得意とするところ。
中でも最高とされているのが、アイリッシュ・リネンの名門、スペンス・ブライソン社のものです。私たちが「手持ちが違う」と表現する、際立った肌触りや張りを持っています。
リネンというのはもともと生活資材。今でも上等なシーツやテーブルクロスとして用いられています。通気性に優れ、肌触りがよいのが持ち味ですから、イタリアなどでは肌着も売られています。
本来は決して夏だけの素材ではないのですが、日本ではなぜか春夏のものと誤解されています。イタリア人の友人で、一年中、リネンのジャケットで通している男がいますが、もうテロテロになるまで着込んでいて、とにかくカッコイイ。
力まず、年輪を感じさせる着こなしは、リネンがまさに大人の素材であることを教えてもくれます。
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2013年07月22日(月)
インコントロは移転しました [INCONTRO NEWS]
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2013年07月08日(月)
MEN'S EX 2013年8月号 赤峰幸生の「服育のすゝめ」 vol. 8 [MEN'S EX 掲載記事]
TPO別"粋"な装いそのA
『パーティースタイルの正しい装い方』
ハレの場の“粋”は飾り立てることにあらず
今回のテーマはパーティでの装い。男は年齢を重ねるほどに、社交の場に出る機会が増えるものです。特に夏場はレセプションやカクテルパーティが開かれる機会も多く、私も毎週のように多くの席に招かれます。フォーマルなものからカジュアルなものまで様々ありますが、華やかにドレスアップする場面こそ、各人の内面から滲み出るエレガンス、すなわち“粋”なセンスの差が如実に感じられるものです。特にさじ加減が難しいのは、いわゆる「スマートカジュアル」に属するような比較的自由度の高いドレスコードのとき。パーティシーンでは、その場に相応しく「華やかに装うことを楽しもう」というマインドが基幹になります。ですがそれを、あからさまに飾り立ててコスプレのように奇抜な服装をすることと取り違えてはいけません。“粋”な装いとは、あくまでも正統に基づいたもの。しかし、ビジネススーツとなんら変わりない堅苦しい服装でその場に臨むのは言うまでもなく野暮というものです。
夏の基本・リネンスーツを小物でドレスアップする
では、具体的にはどう装うべきか。ご参考までに、私のパーティスタイルの一例をご紹介しましょう。
私にとって、夏のドレスクロージングの大基本となるのはリネンスーツ。これは前回、『盛夏のビジネススタイル』で述べたとおり、正統的なサマースーツのひとつです。そのリネンスーツを、パーティシーンに相応しくドレスアップするのに用いるのが、バタフライ(蝶ネクタイ)です。私はシャルベによるシルク生地のものを好んで締めていますが、きっちりとドレスアップをしつつ、華やかで楽しげな雰囲気を出すにはもってこいのアイテムなのです。ベージュのリネンスーツに合わせるなら、色は同系色の茶。派手すぎるのはいけません。また、シャツもフォーマルで用いるようなピケ地の白無地を選ぶと、いっそう格調高く装えるでしょう。さらに、袖はダブルカフを選んで、カフリンクスを効かせます。私のお気に入りは茶色いメノウがあしらわれたもので、タイと色みを揃えて用いています。靴は少し明るめの茶を。堅苦しくならず砕けすぎないことを意識すると、内羽根のセミブローグあたりがちょうどいいところでしょう。このように、季節に応じたベーシックな装いを基調にしつつ、それをいかにドレスアップして、華やかな場と一体になるかが重要なのです。
派手さはなくとも華麗な着こなし。場の空気を楽しくさせる、そんなマインドが現れた装いこそ、真の“粋”を感じさせるもの。私がかつてお手本としていたのは、『太陽の下の18歳』『8 1/2』といった名作映画。これらの作品の中にも、ドレスアップした登場人物たちが集うシーンを見ることができ、正統でエレガントなパーティスタイルとはどのようなものかを大いに学ぶことができます。未見の方は是非ご参考に。
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朝日新聞be on Saturday " 赤峰幸生の男の流儀 『真夏のジェントルマン』 2013年7月6日(土)掲載" [朝日新聞掲載記事]
往年のジェントルマンは、夏の盛りでも、実にきちんとした服装をしていました。脳裏に浮かぶ一人は、かつての英国宰相、ウィンストン・チャーチルです。
今で言うスリーピースである「三つ組」を着込み、パナマ帽をかぶり、ステッキを操る。口元にはトレードマークの葉巻です。思い浮かべて頂けば、「暑い? 紳士たるもの、夏でも粋にきめたいものだ」といったセリフが聞こえてきませんか?
この夏は日本の店頭で、リネンの提案が盛んです。アイテムとしてまず目につくのが、洗いざらしのシャツ。あえてプレスをかけないことで、表情には味わいがあり、暑い日には触り心地がとてもいい。
ドレスシーンで身に着ける場合、赤峰流では、全体を麻の緩い感じでまとめることはせず、ボトムスには、ピシッとクリースの入ったスラックスを合わせることを意識しています。
リネンのジャケットも味わってみて頂きたい。基本はオフで着ることを考える方が多いと思いますが、職場にも着ていけるものならなおいいでしょう。
無地あるいはチェック地がスタンダード。遠目には無地だけれども、近くで見ると細かい千鳥格子であったり、ヘリンボーンであったりといった生地も「旬」な印象です。着る前には、お尻にかかる部分には簡単にアイロンをかけると、きちんとした印象になります。
しっかりとした厚み、重みがあり、しわになりにくい「ハードリネン」も、上級者向けの素材としてお薦めします。
ネクタイをする時は、光沢がある絹ではなく、リネン混紡やニットなど、素材感を合わせると粋。夏ならではのリネンで、ジェントルマンスタイルを楽しみましょう!
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2013年06月25日(火)
朝日新聞be on Saturday " 赤峰幸生の男の流儀 『白シャツを突き詰める』 2013年6月22日(土)掲載" [朝日新聞掲載記事]
一般に、女性は世の中のしつらえがどう変わっていくのかに関心を持つ人が多いですね。流行に敏感です。一方、男はこだわって、「深掘り」が大好き。クルマや時計、ビンテージなどに強い興味を持つのはたいてい男性です。
日本には、「蝶矢シャツ」という明治創業のメーカーがあります。ここは、白のシャツをどこまで深掘りできるか、突き詰めてきました。
例えば、遠州(静岡)に残された明治の古い織り機を使って生地を作る。レトロな機械だからこそ、オートメーション化された新しい機械では不可能なことができます。縦糸の数を自由に変えられるのです。すると、生地のタッチを微細に調整することができます。古いので織る速度が遅く、大量生産はできませんが、優しい味わい。長く着た時の「くたりの良さ」が違います。
そうした生地を使い、現代的なカットでシャツを作って売り出したところ、東京の新丸ビル店やグランフロント大阪店では好調な売り上げを記録しているといいます。温故知新で成功した好例といえるでしょう。
高温多湿の日本の夏には、強く撚った糸で、ピケ織りのシャツを打ち出しています。ピケと呼ばれる畝織りは、生地と肌の接触する面積が小さく、通気性に優れていて、肌にべたつかない。イメージは、日本を代表する映画監督、小津安二郎が現場で愛用していた白いピケ織りの帽子だそうです。
ここまで来ると、物質的欲求を満たすというより心の満足。「日本の歴史を着ている」という矜持が、男性を満足させるのでしょう。
次回は、粋なシャツの着こなしについて、お伝えしたいと思います。
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