2008年10月06日(月)
MEN'S EX 11月号 平成の寺子屋 赤峰幸生の上級ファッション塾 vol.01 [MEN'S EX 掲載記事]
「モヘアスーツをもっと着よう」
真のクラシックを追求し、服のみならず、生き方そのものに自らのスタイルをもつ男、赤峰幸生。氏が考える、男のお洒落を伝授します。第1回は、「モヘアスーツ」。夏だけの素材にあらず、というお話です。
Q モヘアってなんですか?
アンゴラ山羊の毛のことです
「モヘア山羊はアンゴラ山羊の毛のことで、一般的に南アフリカに生息しているキッドモヘアの毛を使用します。縦に色糸、横に生成りの糸を使っているシャンブレー織りのものが基本。モヘアは100%ではなく、ウールと混紡・混織したウールモヘアが一般的です」
Q 生地の特徴は?
シワになりにくく、非常にタフな素材です
「張りとコシ、落ち感という、生地において大切な3要素が備わっていて、シワになりにくく、クリースも取れにくいのが特徴。非常にタフで、平気で10年は着られます。3プライの糸(2プライのものも)で織られるのが一般的で、適度な光沢を備えています。」
Q 夏の素材のイメージがありますけど・・・・・
1年を通して着られる素材です
「モヘアはシャリ感があるので特に日本では夏用素材のイメージがありますが、本来は年間を通して着られる素材で、実際、私は1年を通して最も着用している素材です。ドレスコードのあるオフィシャルな場には、私はモヘア混のスーツを着用して出掛けます」
Q 最も有名なモヘアは?
ドーメル社のトニックです
「ドーメルが1957年に開発したトニックです。縦糸に梳毛、横糸にアルパカとキッドモヘアを使った服地で、2つの天然繊維が3プライで撚り合わされています。この生地が完成したときに、ジントニックで祝杯をあげたことからこの名がついたのは、有名な話です」
■あまり知られていないモヘアの魅力とは?
M.E. 新連載、よろしくお願い致します。継続こそ最大の力なりということで、赤峰さんが今日まで蓄積されてきた洋服のイロハを、本連載を通じてたっぷりご伝授いただければと思います。
赤峰 よろしくお願いします。
M.E. 第1回目のテーマはモヘアです。
赤峰 モヘアはアンゴラ山羊の毛のことで、主に南アフリカに生息しているキッドモヘアの毛を使用しています。シャンブレー織りで、そうでないものもありますが、縦に色糸、横に生成りの糸を使っているものが多いですね。
M.E. なるほど。
赤峰 モヘアは毛自体に張り感と独特の光沢感があります。業界用語でいうところの張り、コシ、落ち感も備わっていて、特に3番目の、生地が縦に落ちて行きたがる特性を持っているのがポイントです。今日着ているスーツの生地は、アカミネロイヤルラインの3プライモヘアなんですが、これは英国式の紡績方法(フライヤー精紡機)で、空気を含ませながら糸を撚ったものなので、糸に丸みが生まれ、よりいっそうの張りとかコシが生まれるんです。そのモヘア生地の便利な特徴はなんだと思います?
M.E. シワになりにくい、ですか?
赤峰 そうですね。さらに言及すると、シワが取れやすいということです。それとクリースが取れにくいこと。ですので、海外への出張時には必ずモヘアスーツを持参します。出張前にきちんとプレスしていけば、トランクに入れて持って行ってもプレスをし直す必要がないので、大変重宝しています。
本物のモヘアスーツは10年間着たって全然平気。
非常にタフな素材なんです。
(←)赤峰さんご着用のアイテムは、スーツ、シャツ、タイすべてアカミネロイヤルライン。
3プライのモヘア混スーツは、モヘア60%、ウール40%。シューズはニュー&リングウッド。
■モヘアスーツは夏だけのアイテムにあらず
M.E. 赤峰さんは一年を通してモヘアスーツを着るんですか?
赤峰 もちろんです。生地の重さはシーズンによって使い分けますが、一年を通して着ます。日本では春夏しかやっていないところが多いですが、それは赤峰的にはおかしいと思います。冬だからフランネルのスーツを着てパーティに行くかといえば、フラノはスポーティな素材で、そういうところで着る素材ではないですから。パーティのときは白と黒の糸の、グレイのモヘアスーツ。赤峰にとっての基本の基です。
M.E. ドレスコードのスーツですか?
赤峰 モヘアのスーツをきちんと着るのが、ドレスコードの代表的なスタイルであると私自身は思っています。パーティには粋な感じが必要じゃないですか。かと言って黒を着るほどではないときに、非常にいいと思います。日本でも海外でも、オフィシャルな場に出るときには必須の1着です。
M.E. 耐久性はいかがですか?
赤峰 非常に高いですね。私が今日着ているスーツなんて、10年着ても全然平気です。普通の生地だったら2〜3年着たら膝が抜けてしまいますけど、これは全然へたりません。張り感があるので形崩れもしにくいですし。
M.E. お好きなモヘアのタイプは?
赤峰 ヨーロッパでは1mあたりの重さで生地を表すのですが、私は430gくらいのものが好きですね。一般的には280〜290gですが、これは夏用の話。ほかに大きく330〜340g、380gとありますが、380gはほしいかな。430gは夏着るには暑いですけど、冬場は非常に快適です。混率は、一般的にはモヘア30%、ウール70%が多いですが、これもモヘアは40%〜50%入っていてほしい。アカミネロイヤルラインのは、モヘア60%、ウール40%です。このくらいになると、かなりの張り感が生まれてシャキッとするというのかな、着用すると背筋が伸びる感じがします。
M.E. 最後にもう一度メッセージを。
赤峰 モヘアスーツは、フランク・シナトラ、ピーター・セラーズ、ジャン・ギャバン、マストロヤンニなど、各国の往年の洒落者が好んで着ていましたし、日本でも信濃屋の白井さん、UAの鴨志田さん、バタクの中寺さんといった本当に服が好きな人たちが、一年を通して着ています。もっとモヘアスーツを楽しんでほしいですね。
◆赤峰塾長がオススメするモヘア生地はコレ!◆
ドーメル トニック2000
'57年当時のトニックのオリジナルの製法を今風にアレンジして織った、ウール70%、モヘア30%の服地。横にウールとモヘアのブレンド糸を使用。325g/m
ウィリアム ハルステッド カンデブーモヘア
英国のミルでモヘアといえばここ。南アフリカの希少なカンデブーモヘアを使用し、かなり張りのある生地に仕上がっています。モヘア60%、ウール40%。390g/m
アカミネロイヤルライン 3プライモヘア
赤峰さんのディレクションで縦糸を2プライ、横糸を3プライにして国内で織った、モヘア60%、ウール40%の服地。素晴らしい打ち込みのよさが自慢。435g/m
カルネット タオロ2
伊ビエラの服地メーカーが、英国で織らせたモヘア。発色の美しさがポイントの、サマーキッドモヘア。モヘア55%、ウール45%。ミドルウエイトの350g/m
◆赤峰塾長がオススメするモヘアスーツはコレ!◆
しっかりした打ち込みで仕立て栄えするモヘアカシミア
サマーキッドモヘア60%、カシミア40%による英テーラー&ロッヂの非常にラグジュアリーな生地は、打ち込みの良さ◎。3ピーススーツで42万4000円(オーダー価格)/バタク(バタク)
フィレンツェの名門からモダンなウールモヘア
赤峰さんの親友、アントニオ・リヴェラーノ氏のプレタ。ウール85%、モヘア15%で、ミドルウエイト。37万8000円/リヴェラーノ&リヴェラーノ(ユナイテッドアローズ 原宿本店 メンズ館)
赤峰イズム満載の国産モヘアウールを使用
赤峰さんの親友、アントニオ・リヴェラーノ氏のプレタ。ウール85%、モヘア15%で、ミドルウエイト。37万8000円/リヴェラーノ&リヴェラーノ(ユナイテッドアローズ 原宿本店 メンズ館)
今月のおさらい
壱 シワになりにくく クリースも取れにくい モヘアスーツは、海外出張でも大変重宝
弐 形崩れしにくく 非常にタフな 赤峰的モヘアスーツは、10年間でも着られます
参 モヘアは夏だけの 素材ではなし。 ウエイトのある生地なら 真冬でも着用可能です
四 重さ380g/m以上。 モヘア40%以上の混率が 赤峰的モヘアの 基本クリア条件です
Posted by インコントロ STAFF at 00時00分 コメント ( 1 )
コメント
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僕はどうしてもモヘアのスーツが好きになれません。一昔前は高級スーツとして流行ったのを思い出します。60年代、70年代の政治家はみんなモヘアのスーツを着ていたのですが、僕も新入社員のとき、サンローゼのルチアノ・バルベラで購入したのは良いのですが、皺になりにくいのは湿気の無い時だけで、日本の梅雨時には、水分を含んで、嫌な皺んが出来るし、おまけに嫌な匂いまでしました。