AKAMINE BLOG

メンズファッションディレクター 赤峰 幸生のBLOGです。

2007年11月24日(土)

OCEANS 1月号連載 AKAMINE STYLE 目覚めよ、日本の男たち! [OCEANS掲載記事]

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マエストロ赤峰の「オトナ相談室」
仕事、家庭、子育て、そして愛・・・・などなど。
30〜40代のオーシャンズ世代にもなれば、少なからず何かしら悩みのタネは持っているもの。
そんな皆さんの“駆け込み寺”として開設されたのが、このオトナ相談室。
皆さんの質問にお答えするのは、“人生のマエストロ”こと赤峰幸生氏。
今月も迷えるオーシャンズ読者に、痛快なご意見で救いの手を差し伸べてくれるハズ!
では皆さん、ご一緒に!教えてっ、マエストロ!


今月のテーマ
“仕事観”

[今月の質問]
私は来年、会社勤めを始めて14年目を迎えます。年齢的にも、いわゆる中間管理職といわれるようなポストで仕事をしています。よき上司や部下に囲まれ、職場環境には比較的恵まれている気はします。しかし、役職にふさわしい給料であるかどうかがわからず、転職を考え始めています。マエストロ、転職を決意するときの大切な判断基準とは何でしょう?(36歳・文京区在住・商社勤務Y・Sさん)

Q.この方、転職したいそうです。収入アップのほかに大切なのは、ズバリ何なのでしょうか?
 何だと、もう一度言ってみろ!私の耳が遠いのか、それは収入がもっとも大切だということか?どうか聞き違いだと言ってくれ。どうして、お前はそうなんだ。世の中、何でも金、金、金。私だけでなく、多くの読者がそんな話にはうんざりしていると信じたい。収入アップのための転職だと?ふざけるな。お前は根本的に間違っていることがわからないのか。そういう輩に限って、どこそこの大学出身だの、世間に知られている会社かどうかだの、上っ面の名前に翻弄されている。そして、自分の価値を年収で測っている。金に替わる価値観を持て!そもそもお前は今の仕事に誇りを持っているのか?転職などを考える前にまず、それを自分自身に問うてみよ。どんな職業だっていい。いかほどの収入だっていい。自分の仕事を誇れるか、それが仕事に対しての唯一の判断基準なのである。最近はあらゆる業種で偽装、偽装と騒ぎ立てている。人はどうして偽装するのか?答えは簡単、金のためだ。そして、そんなまがいものの仕事には、誇りなど持てようはずもなかろう。
 私は転職を繰り返してきた。しかし、それは金のためなどではない。無論、志のためである。どの会社にいるときでも、私は自分の仕事に誇りを持ってやってきた。(注1)桑沢デザイン研究所を出て、オートクチュールのデザイナーを志したが、家の事情でフランス留学を断念。その後はアパレルメーカーでのアルバイトからのスタートだ。それからは自分の志のための、険しい修業の道程だ。だが、よき先輩に恵まれた。今でも恩師と慕う先輩から、当時こんな言葉をいただいた。「行くは小道に寄らず」。どんな道程だろうとも、男なら常に自分にとっての大道を歩めばよいということだ。それと「水を飲む人は最初に井戸を掘った人を忘れるな」。つまり、常に感謝の気持ちを持てということだ。今ある自分は、先達がいてこそ。自分独りで成し得ることなどない。先人への敬意の念を忘れてはいけないのだ。転職をやめろとは言わない。だが、金に翻弄されるな。金以外の価値を見出せるかが分かれ道である。己の志に従い、次のステージに進まんとしているか。その道の職人になれ。人からそう呼ばれれば本物だ。私も職人を目指し、毎日その修業を重ねている。それは人生の限り、続くのだ。そして、そのためにもっとも大切なのは質の高い人との出会いを求めること。職人への道はよき出会いが開いてくれる。金に翻弄された転職に光明などない。

Q.では、早く職人になれるためのマエストロ流の必殺マニュアルをぜひ伝授してくださいっ!
 このやろう、目を覚まさねぇか!伝授だと?ふざけるな。職人への道にマニュアルなどあろうはずがない。ましてや、近道など言語道断だ。だが、あえて伝えておくとすればこうだ。仕事はコミュニケーションであることを理解せよ。仕事とは、取引先、上司、部下、人と人がつながって初めて成立する。便利だからといって近ごろはメールに頼りすぎている。メールだけで済ませ、相手の言葉を聞こうとしない、顔を見ようとしない、ただこなす、だけ。それで終わっている。なかでもこなしたように見せているだけの輩は手に負えない。世の中が便利になりスピード化したことで、コミュニケーションそのものも簡略化している。それでは、職人への道は果てしなく遠い。もちろん便利なコミュニケーションツールとしてメールは活用しろ。今の時代、当然だ。だが、メールだけで事を済ませるな。相手に会って、顔を見て、目を見て、言葉を聞け。10の仕事を10合理的に済ませることばかりを考えるな。少しくらいの時間や手間をかけるだけで、それは15にも20にもなるかもしれない。いい加減、時間という制約意識から自分を解放してやれ。一見、ムダに思えて、ムダでないことがいかに多いか。どれだけムダなことをやったかが大事となるのだ。成功のためのムダであるなら大いに結構なことではないか。売り上げの数字だけを追うな。仕事をマニュアル化するな。数字を伸ばすことだけに注力した仕事は味が薄い。チャップリンの「(注2)モダン・タイムス」。あれはただネジを回すだけでその仕事の目的を知らない、または考えていない男を描いている。つまり、自分の仕事の本質を見ようともしない、愚かな男の姿である。まさに反面教師だ。

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(→)古本屋のメッカ、神保町にもよく足を運ぶというマエストロ。お店で気になる本を物色するその鋭い眼光からは、他を寄せ付けない気迫すら感じられました。場所は行きつけの古本屋「一誠堂書店」。

Q.酒好きの上司に生意気な部下、そして毎日、そんな両者の折衝役・・・・・。そんなの誰だって嫌になりますよね?
 いい加減にしやがれ、てめぇは鵜飼の鵜か!何が折衝役だ、ふざけるな!だから、ダメなんだ。お前の仕事は上から下へのただの伝達役か。しっかり仕事の本質をとらえろ。
 お酒を飲みに上司から誘われたときのうまい断り方を教えてくれだと!てめぇはただの馬鹿やろうか!そんなつまらないことで悩むのはやめてくれ。とはいえ、私も強引な誘いには困ることもある。あえてアドバイスを送るとすれば、時間は有効に使うということだ。時には、その場で適当に酔ったフリをして、周りを楽しませればいい。それよりもお前は、その場にいる人から何かを学ぶことを考えろ。何だっていい。常に学ぶ姿勢を持て。嫌々、酒に付き合うくらいなら、次は行ってみたい店を見つけて提案するくらいの図太さを持て。人と出会う貴重な機会を、逃してはいけない。決して食わず嫌いをするな!
 部下に対してもそうだ。仕事へのモチベーションを上げさせる方法を教えろだ?いい加減にしてくれ。お前は部下に成果を求めてばかりではないか自分に問うてみよ。求めるばかりではなく、部下と成果をともに分かち合え。それはお前に、「一個の饅頭を半分にして、それを部下に与える気持ち」があるかどうかだ。部下には仕事に感動があることを教えろ。例えば、アパレルメーカーであるとしよう。ならば、部下に服が作られている現場を見せろ。どこで誰が仕立てているのか、そしてその生地、さらにその糸はどこで誰が作っているのかをつきつめろ。そして、どこで誰が売り、誰が買っているのかをつきつめろ。そこに笑顔があれば、仕事に感動があることがわかる。誇りが持てることを知る。自分の仕事の意義、目的が見えてくる。仕事の根っこ、本質を求めよ。仕事の一気通貫を教えろ。木を見て森を見ないのではいただけない。その逆も然りだ。それでは部下の高いモチベーションなど夢物語だ。「仕事は人のためならず」。仕事は自分以外の誰かの喜びでもあるが、自分の喜びでもあるのだ。それは、世界中のどんな仕事にも当てはまるのである。

Q.日本から海外へ飛び出してバリバリ働くのも格好いいな。どこの国がおすすめですか?
 てめぇ、話がまったく違わねぇか!転職の話はどうした?いったい誰と話してやがったんだ!まぁ、海外で働くことがお前のひとつの志ならば、それも仕方ない。とはいえ、この質問に答えるのは難しい。だが、あえて答えるとするなら、どこもおすすめと言っておく。なぜなら、言うまでもなくそれはお前次第だからだ。選んだ道の職人として海外へ飛び出すならば、心して聞いてほしいことがある。それは、まず自分がどの程度この日本という国について知っているか。当然だが、国が変われば歴史や文化が異なる。となれば、まずは日本のことをどれくらい話せるか?海外へ飛び立つ前にそこを自問すべきだ。あとは、揺るぎない職人魂があればよい。
 先日、これまで面識のなかったポール・スチュアートの社長である(注3)クリフォード・グロッド氏が私のオフィスを訪れた。そして、私の作る服を「リアル・ジャパニーズ・スタンダード」と評したのだ。それは、私にとっては望外の褒め言葉であった。私が自分の仕事に誇りを持ち、その道で職人であらんとすることを実践してきた成果でもあるだろう。志を持って歩き続けること。それは決して容易なことではない。だが、大きな意味がある。自分の大道を進み続ける。男として、これ以上の格好いい生き方があるだろうか。くれぐれも読者がその道程で小道に寄らないことを祈っている。

 
(注1) 「桑沢デザイン研究所」
バウハウスの影響を強く受けた桑澤洋子が1925年に設立。日本で最初に「デザイン」を校名に冠した教育機関であり、さまざまな分野で活躍するクリエイターを輩出してきた。マエストロにとって原点となる専門学校である。


(注2) 「モダン・タイムス」
1936年のアメリカ映画。チャールズ・チャップリンが監督、製作、脚本、作曲を担当し、主演したモノクロの喜劇映画である。


(注3) 「クリフォード・グロッド氏」
アメリカン・トラディショナルブランドの代表である、ポール・スチュアートの社長。稀代のウェルドレッサーとしても名高い人物。


 
 

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−近ごろのマエストロ−
「生涯の友を持て」

現在は中国に住んでいるかつての部下と、久方ぶりに酒を呑んだというマエストロ。「元は上司と部下の関係であるが、利害関係はなく、お互いにリスペクトしている。もう三十数年の付き合いとなる。いいところも悪いところも、知り尽くしている。そういう間柄の友は私にとってかけがえのない存在だ。学生時代の友人とはまた違う。仕事を通して、そうした友人を持てるか。それも仕事に誇りを持っているかどうかが、大事ではないかと思う」。

■みなさんからの質問待ってます!
仕事から家庭、恋愛、そしてファッション・・・・・・etc.、日ごろ読者のみなさんが抱える悩み、疑問など、相談したいことをなんでも教えてください。マエストロ赤峰がズバッと解決いたします!インターネットの場合は[ www.oceans-ilm.com ]へアクセスのうえ、「NEWS」から投稿してください。郵送の場合はハガキに @相談したいこと A氏名(ふりがな) B住所 C年齢 D職業 E電話番号 Fメールアドレス G赤峰連載への感想 を明記し、〒162-0825東京都新宿区神楽坂6-42 喜多川ビル8F オーシャンズ編集部「オトナ相談室係」までお送りください。質問が採用された方の中から、抽選で毎月1名様にマエストロ直筆の“ありがた語録”色紙をプレゼント!

Posted by インコントロ STAFF at 00時00分   コメント ( 0 )

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朝日新聞be on Saturday " 赤峰幸生の男の流儀 『自然に溶け込む服』 2013年9月21日(土)掲載"

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