2007年12月04日(火)
『時代を超えて存在するもの。それがビンテージ・クロージング』 BUSINESS GHETE vol.3 11/25付け朝日新聞タブロイド判 [朝日新聞掲載記事]
11月25日付け『BUSINESS GHETE Vol.3』(朝日新聞タブロイド判)のVINTAGEの特集ページにて、代表赤峰が約30年かけて集めてきたアーカイヴコレクションの一部をご紹介しながら、「クラシックなスーツが少しづつ見直されている現状」と「ビンテージとは?」という視点からのコメントをさせていただきました。掲載ページを以下にご紹介させていただきました。
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インコントロを主宰し、「Akamine Royal Line」を展開する赤峰幸生氏にビンテージ・クロージングの魅力について伺ってみた。
ビンテージの楽しさとは、それがこの世にひとつしかないということだ。それは一期一会にも通ずる。しかし、ビンテージ・クロージングの魅力とはそんなものだけではなかった。
「30年かけて英国のビンテージ・クロージングを集めました。一見すると今の服に似ていますが、素材の質や縫製、すべてにわたって違います。ほとんどが英国サビルロウで仕立てられたもので、メンズ・クロージングの原点、源泉と呼べるものばかりです」
英国陸軍が着用したダッフル・コートやトレンチ・コートをはじめ、アクアスキュータムの1941年製トレンチ・コート、アルフレッド・ダンヒルのカー・ジャケット、アルスター・コート、ハンティング・ジャケット、クラブ・ジャケット、カバート・コートなど、赤峰氏のアーカイヴ・コレクションはすべてが粒ぞろい。これらは国内で気軽に買える古着ではなく、職人が時間と情熱をかけて作った20世紀初頭から半ばまでの逸品である。たとえば胸のボリュームを出すための細かなテクニックや、車を運転しやすいように考え抜かれた袖付けの角度。完全防水を目的に開発されたゴム引きクロス。着心地と撥水性を両立した理想的な素材であるアクアスキュータムのアクア5など、随所に目的に応じた機能性が施されている。
博物館に永久展示したいほどの魅惑のコレクションであるが、赤峰氏は集めるのが目的ではなく、現在の服作りの教科書として捉えている。洋服の歴史をもたない日本人にとって、このリアルな原点の検証こそ大切だという。
「ビンテージ・クロージングに使用されている服地は低速織機で時間をかけて織られています。ゆっくり織ることでウール本来の特性を最大限に生かすことができ、打ち込みのしっかりした密度のあるヘビーなものが仕上がるわけです。量産を目的に開発された現在の高速織機でこの服地を再現することは不可能なのです」
低速織機でゆっくりと織られた服地は、高い縫製技術によって仕立てられる。そしてこれらの多くは、父から息子へと代々受け継がれ、時代を超えて現在にまで生き残っているのである。では、現在巷にあふれているブランドの服が、将来ビンテージ・クロージングになりうるかといえば、答えはNOである。たとえハイエンドなブランドであっても、ビスポーク(オーダーメイド)が当たり前だった時代に作られたものに比べると、作りも服地も耐久性では劣るだろう。
ただ、うれしいことにここ最近はクラシックなスーツが見直されてきている。それは懐古趣味的な一時のブームではなく、メンズ・クロージングの原点への回帰現象と考えていい。つまり赤峰氏のアーカイヴ・コレクションのようなビンテージ・クロージングに近づこうとする動きである。スーツの場合、既製服であっても縫製の工程数を増やしたり、使用する服地や芯地にこだわることで、長年着用できるものが増えてきた。
「Akamine Royal Lineでは低速織機を使って、時間をかけて織った服地を使用しています。縫製も大きな工場ではなく、国内の小さなアトリエで行っています。当時のものを復刻するのではなく、デザインは現在のクラシックです。ここから生まれたクロージングは、既製品であっても10年以上は着られます。たとえ古くなっても美しさが残るはず。今の世の中、高額な商品はたくさんありますが、上質なものは本当に少ない。真のラグジュアリーとは、時代を超えて存在するものだと思います。我々が目指しているのは明日のビンテージなんです」
1930年代
ハンティングジャケット
1930〜1940年代にサビルロウで仕立てられたハンティング及び乗馬用のハッキング・ジャケットも兼ねていたジャケット。胸ポケットは弧を描いたスラントポケットで、深いベントが特徴。肩の縫い線が後ろ身頃にバックソーイングになっている。これはいせ込み量を増やすためである。また胸のドレープを作りだすための職人技が隠されている。
1935
トレンチコート
第一次世界大戦のときに英国陸軍が着用したトレンチ・コート。まだコットンギャバジンが普及する前もので、防水性を考慮してゴム引きにしている。表から見るとコットンのツイル地にしか見えないが、ゴムを張り合わせることで完全防水を表現している。また、欠点でもある蒸れを防ぐために脇下付近に通気用の穴がある。当時はこれを着て何時間も塹壕の中にいたのだろう。
1951
アルスターコート
使われている素材はキャバリー・ツイルを圧縮したような肉厚のもので、1mあたり900gはある。現在ではとても織ることができないという。コートの裏地には厚いウール×アルパカの毛布地が取り付けられていて、保温性を確保している。
1955
ファー付きコート
衿にはファーをあしらったコート。裏地にはムートンを取り付けて防寒性を高めている。さらに袖の裏地も上側が保温性を考慮してムートンになっていて、下側は袖を通したときにすべりがいいように中綿が入っている。また裏地のムートンの下側はサビルロウらしい白黒のチェックになっている。
1958
ダッフルコート
第一次世界大戦の頃のダッフルコートで、素材は現在のものに比べるとゴワゴワしている。裁断は直線裁ちで、トッグルの位置も上部に配されている。これによって脚が出やすくなり、歩行の邪魔にならないというわけである。またトッグルを留めている裏側の力布(補強布)には、インドのグルカ兵も愛用したドリル(太綾織布)が使われている。
1932
レザーコート
アルフレッド・ダンヒルがモータリゼーションに力を入れていた証ともいえる、レザー製のカーレース用コート。袖はラグランスリーブなのだが、車のハンドルを握りやすいように、袖付けが前振りになっている。当時はオープンカーということもあり、保温性を高めるために裏地に毛布が取り付けられている。
Posted by インコントロ STAFF at 17時05分 コメント ( 1 )
コメント
はじめまして
他のWEBの軽薄で内容の無い記事にうんざりしている所
こちらに立ち寄らせていただきました。
サイコーですね!
質 情報量共完璧です!!
今後とも 楽しい記事 心待ちにしています!!