2007年02月24日(土)
OCEANS 4月号 連載#13 [OCEANS掲載記事]
King of Elegance
マエストロ赤峰の
「粋がわかれば、すべてがわかる」
グレーの“粋”
今年1月、次の秋冬に向けた服飾見本市(注1)ピッティウォモに行ってきた。クラシックには流行りという概念はないが、旬というものはある。メーカー主導とはいえ、時代性として少なからず意識し、柔軟な姿勢で取り入れることを推奨したい。では、その具体的な内容であるが、イタリアを中心に世界中のメーカーが集うピッティの会場で、注目すべきは(注2)グレーであった。ライトからミディアムまで、(注3)明るいトーンのグレーがこれほどに目立ったことは、かつてないようにも思われる。これは今季の春夏にも通じるトレンドだ。スタンダードなカラーゆえに、着こなしは比較的、容易に思われるが、黒やネイビーに比べて、ごまかしのきかないカラーであることに留意したい。まず、グレーは無彩色であるがゆえに、光の当たり具合やドレープにより、素材感が際立って見える。だからこそ、グレーは(注4)上質な素材であることが他の色以上に求められる。かつて、日本ではグレースーツと言えば、ネズミ色スーツと揶揄されたこともあるが、質のいい素材のピュアなグレーは実にエレガントだ。そして、質のいいグレースーツやジャケットは、旬でありながら10年以上着続けられることも魅力的だ。
上質なグレーのスーツやジャケットを手に入れたなら、次は着こなし方が課題。日本人はとかく、(注5)単品へのこだわりが強い。しかし、スーツやジャケットを着たときのエレガントな見せ方のポイントは、ズバリ色合わせのみ。点ではなく線で見せる、つまり、どのように色を繋げるかということだ。無難なのは黒。ただし、グレーに合わせる場合、黒の分量は少なめに。全体が重くならないようにしたい。そこで、おすすめしたいのは茶だ。その際はグレーと茶のトーンが揃うように心がけたい。自然に色が繋がっているようなハーモニーが、エレガントに見える秘訣。赤や青などアクセントカラーを差し込むなら一色だけ、しかも小さな面積で。ビジネスシーンはもちろんだが、この春夏にはグレーをベースにしたスポーティな着こなしもおすすめだ。今回は参考になるように、2パターンをご覧いただこう。
ドレスマインドを宿した、リゾートでのシックな着こなし
ダブルブレストのジャケットは、赤峰氏がディレクションを手がけるプライベートブランド、Y.アカミネの2007年春夏コレクションからの一着。素材はウールのようにソフトな手触りを得られる平織りのコットン。ラペル幅が広めで、着丈はやや短く、ドロップはきつめ。また、玉縁ポケットで、白の貝ボタンを採用している。イタリアンカラーの白シャツをインナーに、パンツは茶のコーデュロイ。足元はストール マンテラッシのスエードスリッポン。ジャケットのライトグレーのトーンに対して、パンツと靴の茶のトーンを揃え、キレイなグラデーションを作っているのがポイントに。
ダブルブレストのスーツは、ポロシャツを合わせて脱力で!
フィレンツェのテーラー、リベラーノ リベラーノにて8年ほど前に仕立てた6ボタンダブルブレストのスーツ。素材は英国のテキスタイルメーカー、ウィリアムハルステッド社のキッドモヘア。グレーのオーセンティックな一着は、長く使える現役選手、そんな見本でもある。インナーのポロシャツは、シーアイランドコットン製。かつて赤峰氏がディレクションしていたグレンオーバーのもので、28年ほど前から愛用。カラートーンを合わせているとともに、素材感のハーモニーも絶妙。手にはペルソールのサングラス、足元は右と同じスエードのスリッポン。
(注1) 「ピッティウォモ」
毎年1月と6月にイタリアのフィレンツェにて催されるメンズの国際服飾見本市。クラシコ・イタリア協会に属するメーカーを筆頭に、クラシックからストリートまで、世界中のメーカーが集う。それに伴い、世界中のバイヤーも勢揃い。次のメンズファッショントレンドが模索される場所なのだ。
(注2) 「グレー」
1月のメンズミラノコレクションでもグレーが主流。つまりこのグレーのトレンドは今年の秋冬まで続くということ。2006年6月号の本誌でも、「都市型グレースーツ」を特集。
(注3) 「明るいトーン」
グレーはトーンによって、さまざまなカテゴリーに分かれる。特にトレンドとして浮上しているのは、ライトグレーからミディアムグレー。チャコールまではいかないミディアムダークまでの、比較的明るめのトーン。
(注4) 「上質な素材」
特に注目すべきは、モヘアやシルクの混紡されている素材。シャイニーなグレーが、春夏にふさわしい清涼感を演出し、シックな雰囲気を醸し出す。
(注5) 「単品へのこだわり」
スーツやジャケットを購入する際には、どのように着こなすのかを頭の中でイメージすることが重要だ。ブランドのネームに惑わされがちだと単品を選んでしまう!とは赤峰氏の指摘。
写真集「Dressing in the Dark」を見ると、映画のシーンからメンズスタイルが考察できる。グレーの着こなしで参考となるのは、左のジョージ・クルーニーの着こなし。グレージャケットに白シャツが、シンプルでシック。
写真集「ALBUM ANTONIONI」より。参考にしていただきたいのは、椅子に座っているジャック・ニコルソン。グレーのこなしではないものの、脱力しながらもエレガンスをキープしているのが洒脱。
Posted by インコントロ STAFF at 00時00分 コメント ( 0 )