AKAMINE BLOG

メンズファッションディレクター 赤峰 幸生のBLOGです。

2007年01月06日(土)

MEN'S EX 2月号 菊池武夫と赤峰幸生の Be Buffalo Forever! vol.9 [MEN'S EX 掲載記事]

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菊池武夫さんと赤峰幸生さん。
ファッション界の2人の巨匠が毎回テーマを決め、それに基づいてファッションを披露し語り合う、夢の対談連載。

「今月のテーマ」
映画に見るマフィアの着こなし

「アンタッチャブル」や「ゴッドファーザー」シリーズを例にとるとよくわかりますが、昔のマフィアには、着こなしにしても、生き様にしても、そこには惚れぼれするようなカッコよさがありました。実際、お2人も大いに影響を受けたといいます。となれば当然、話が盛り上がらないわけがなく・・・・・。

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■(写真右)菊池武夫氏
・ボルサリーノの帽子
・グッチのサングラス
・グッチのシャツ
・レプリカのペイントタイ
・ベルヴェストのサキソニーフラノの3ピーススーツ
・ベーメルズのスエードプレーントゥ
 



■(写真左)赤峰幸生氏
・シャルベの肉厚ポプリン地のオーダーシャツ
・シンプソンの'50年代のヴィンテージタイ
・'40年代のサヴィル・ロウ仕立てのヴィンテージコート
・デッドストックのフラノ地で仕立てたリヴェラーノ&リヴェラーノのスーツ
・ベレッタ(もちろんモデルガンです)
・フローシャイムのインペリアルシリーズのウイングチップ



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今回の撮影の舞台となったのは、広尾のリストランテ「ラ・ビスボッチャ」。
イタリア政府が公認するだけあって、店内の雰囲気は本場そのものです。それにしても、エスプレッソを飲みながら会話に興じるお2人の佇まいはホンモノ感ありすぎです(笑)。

■昔からマフィアには不思議と惹きつけられた
菊池  いやぁ〜、赤峰さん、バッチリですね。付け髭に拳銃を構えた姿はもうそのまんまって感じですよ(笑)。
赤峰  いやいや。そういう菊池さんだって随分と貫禄があってカッコイイですよ。なんだか、映画版「アンタッチャブル」のアル・カポネの雰囲気に似ていますよね。
菊池  ロバート・デ・ニーロが演じたあの役ですね。
赤峰  そう、デ・ニーロの雰囲気ピッタリですよ。そのプリントのタイなんか、ずばりそのものって感じですし。だいたい昔のタイってテカテカに光ったレーヨンでできているんですよね。決してシルクばかりではない。
菊池  まぁ、僕の場合はそもそもマジメなものに惹かれない性質でして、偽悪的というのかな、一見すると悪いんだけど実はいいヤツだってところに魅力を感じるんですよ。だからなのか、ダーティーヒーローのイメージがあるマフィアには昔から不思議と惹きつけられましたね。
赤峰  わかります。日本の任侠もそうですが、マフィアにはある種の男の美学があります。僕の場合、なんといっても(注1)ロバート・スタックがエリオット・ネスを演じたTVシリーズの「アンタッチャブル」の影響が強いです。
菊池  うん、あれは面白かった。フランク・ニティやアル・カポネといったイタリア系マフィアの姿が印象的でね。映画版に比べてもはるかにリアリティがありましたよ。そういえば今日の赤峰さんの着こなしにはどことなくその時代の匂いがしますね。
赤峰  1930年代の大恐慌の頃のニューヨークのイメージが好きで、それを1回やりたかったんです(笑)。
菊池  あぁ、わかります。
赤峰  少年時代からマフィア的な生き方に憧れていて、それでこの仕事を始めるようになると、イタリアに行く機会も多いじゃないですか。実際、15年ほど前にはシチリア島の(注2)コルレオーネ村にも行きましたよ。やっぱり向こうは本場だけあってマフィアの存在は欠かせませんよね。マフィアを語らずしてイタリアを語るなって感じです。そうそう、“マフィオーゾ”っていう言葉もあるんですよ。
菊池  へぇ、どういう意味ですか?
赤峰  「マフィア的精神」と訳すみたいで、要するに日本の武士道やヨーロッパの騎士道に通じるスタイルのことを表す言葉だそうです。
菊池  なるほど。規律やルールがちゃんとあって、無粋なことはしないといった生き方はお互いに通じるものがありますね。マフィアにしても武士にしてもそうですが、常に死と隣り合わせの中で緊張感をもって生きるというのはやっぱりカッコいいですよね。
赤峰  アメリカにゲイ・タリーズという作家がいて、彼の代表作にマフィアの興亡を描いた「汝の父を敬え」という本があるんですけど、これなんかはそういったマフィア道みたいなことが書かれていて面白いですよ。たとえ悪事を働くにしてもちゃんと一本筋の通ったことをやれって。
菊池  悪の美学と、それに基づいたルールみたいなものがありましたよね。だからそれを破ったときは恐ろしかった。人の女に手を出した奴は、殺された後に口に魚を入れられるとかね。でも、これもまたひとつのルールなんですよ。どういう理由で殺されたのか、わかるわけですから。
赤峰  ただ、残念ながら現代ではそういった、いわゆるマフィア道を堅持している人たちは多くないと聞きます。なんといっても今の時代は目先の損得だけを考えて動きますからね。それこそ(注3)サルヴァトーレ・ジュリアーノのように義侠心で立ち上がることもない。
菊池  圧政から貧しい農民を救ったって話ですよね。今の時代には恐らくないでしょうね。どの世界を見渡しても、流儀とか、スタイルといったものは崩壊してしまって、目的さえ達成できればなんでもありの状態になっていますから。おかしなことですよ。
赤峰  これは服についても同じことがいえますよね。目先の流行ばかりを追ってしまって、本当のクラシックを踏まえたうえでのカッコよさというのがなくなっているように思います。
菊池  そうです。ただ流行りだからといって闇雲に服を着ていてはダメ。本来の正当なスタイルに対して仁義を切るというのか、そこを知らないで本当のカッコよさというのは身につかないですよ。

■カッコよさというのはスレスレの生き方に宿る
赤峰  マフィアといえば、カポネもニティも、みんなイタリアからの移民ですよね。やっぱり当時は貧しくて働き口がないから、手先の器用なヤツはブルックスブラザーズの工場に入って職人になったり、顔のいいヤツはハリウッドスターになったり、それでもどうしようもないワルがマフィアになっていったわけです。
菊池  ハリウッドだと、フランク・シナトラとかね。彼はスターでもありましたけど、マフィアとのつながりも密接でした。「ゴッドファーザー」に出てくるジョニー・フォンテーンという歌手は、シナトラがモデルですよ。
赤峰  あとは、(注4)ジョージ・ラフトも半分マフィアみたいな俳優でした。
菊池  今はどうか知りませんが、当時のハリウッドは闇社会と分かちがたく結びついていましたからね。
赤峰  実際にそうでなくても、ハンフリー・ボガートだったり、ジャン・ギャバンだったり、マフィア的な佇まいをもっていることがひとつのカッコよさであり、スターになる条件でした。
菊池  日本では鶴田浩二や高倉健といった人たちかな。強面なんだけど、ストイックで渋い感じがいいです。
赤峰  決して流されない生き方をしていることが魅力なんでしょうね。しかもそういったマインドというのは、おのずと服の着こなしなどにも自己主張といった形で表れていましたよね。
菊池  それこそ1920年代、'30年代というのは、社会全体がわりとドレスアップしていた時代で、普段でもきちっと帽子をかぶっていたりしていたんですけど、マフィアの場合、ニティやカポネに代表されるようにどこか堅気ではない、だけど妙にカッコいい着こなしがありましたね。
赤峰  そういった意味では現在はほとんどわからないですよね。イタリアなんかでも、マフィアがもう普通の感じですから。
菊池  僕が若い頃、確か18歳ぐらいのときかな、六本木によく行っていたジャズクラブがあったんですよ。生演奏を聞かせてくれるところでね。僕はまだ子供なんだけど、粋がってスーツなんか着て(笑)、カウンターに座っていたら、隣にあの安藤昇さん(渋谷に本拠を構えていた伝説の暴力団「安藤組」の組長)の命を狙っていたというヒットマンがいて。
赤峰  ほう、どんなかたでした?
菊池  スカーフェイスで凄く怖い顔をしてるんですよ。で、ひと言もしゃべらない。話し掛けられても一切返事しないんです。あれは怖かったですね。身にまとっている雰囲気が明らかに違いました。ほら、スレスレのところで緊張感をもって生きることって現代ではほとんどないじゃないですか。ましてや命のやり取りをするなんて考えられない。けど、僕が見たヒットマンのようなホンモノの人はいつも死に直面しているわけですよ。そうした世界で自分の意志を貫いて生きていく姿には何か強い力があるし、そこにはどうしようもなく惹きつけられるものがあるんですよね。
赤峰  そう考えると、カッコよさというのはスレスレの生き方に宿るってことなんでしょう。でも、現代のように、目先の損得をばかりを考えていてはなかなかそうした生き方ができない。我々がマフィアや任侠の世界に対して憧れるのは、男としての自分に決定的に何かが欠落していて、それに対する羨望が大きな原因なのではと、僕なんかは思うんですよ。
菊池  うん、恐らくそういうことでしょうね。
 
 

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(注1) 「ロバート・スタック」
1919年米国生まれ。'59年スタートのTVシリーズ「アンタッチャブル」でエリオット・ネス役を好演して大人気を博した。晩年はガンに侵され、2003年に心臓発作で死去。

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(注2) 「コルレオーネ村」
シチリア島の中心地パレルモの南にあるマフィアの聖地。アル・パチーノが主演した映画「ゴッドファーザーPARTV」の舞台としてあまりにも有名。現在は観光地に。

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(注3) 「サルヴァトーレ・ジュリアーノ」
1940年代のシチリアで、支配層からの搾取に苦しむ農民を救うために立ち上がった義賊。その生涯はマイケル・チミノ監督により「シシリアン」として映画化された。

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(注4) 「ジョージ・ラフト」
1903年米国生まれ。二枚目俳優として活躍。主な出演作は「暗黒街の顔役」、「お熱いのがお好き」、「皆殺しのバラード」、「007/カジノ・ロワイヤル」など。'80年没。

Posted by インコントロ STAFF at 00時00分   コメント ( 1 )

コメント

赤峰さん初めまして。私はtakaと申します。
毎月メンズEXの菊池武夫さんとの対談記事を拝見しております。

この度、禁酒法時代から1950年代までのイタリア系のニューヨークマフィアのスタイルについてお聞きしたいと思いまして、ご連絡いたしました。

まず、ラッキールチアーノに代表される1930年代のニューヨークマフィアが着ていた
スーツのデザインやシルエットについてご参考までに教えて頂けないでしょうか。
また、1950年代のフランクコステロやヴィトージェノベーゼに代表されるニューヨーク
マフィアが着ていたスーツのデザインやシルエットについてもご存知の範囲内で
構いませんので、ご参考までに教えて頂けないでしょうか。

ご多用中誠に恐縮ではございますが、
何卒よろしくお願い申し上げます。

taka 2007年10月28日 00時30分 [削除]

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