2014年08月05日(火)
朝日新聞土曜版be 赤峰幸生の男の流儀 『接客の神髄とは』 2014年8月2日(土)掲載 [朝日新聞掲載記事]
お尻を向けたままで、「いらっしゃいませ」。何を着ても「お似合いでございます」。そんな服の店に入ってしまった経験が、誰にもあるのではないでしょうか。
「新入荷です」と、すぐに時代遅れになってしまうような目新しい商品を並べる一方で、基本となる服の品ぞろえは貧弱。二言目には「輸入物ですから」と、海外製品であれば水準が高いような物言いをする。現在の小売りの現場は、問題ばかりだと思っています。
本来、店頭に立つ人間は、お客様のクローゼットの中身を聞いて、要不要を判断する「棚卸し」ができなくてはなりません。そしてもの作りの背景をきちんと伝え、衝動買いは戒める。もっといえば、お客様がどのような人生を送りたいのかというところから、服選びをアドバイスできなければいけないのかもしれません。
基礎的な勉強も大切です。例えば基本のウール素材でも、スコットランドのバリバリした羊毛と、ニュージーランドの毛は違う。シルクの原料となる蚕も、雄と雌では絹糸の太さが違う。織り方も、「速度を抑えて繊維が呼吸できるスピードで織り込んでいます」とお伝えすれば、生地の魅力がグッとましてきませんか?
こうしたことは小売りの現場では知っておかねばならない「義務教育」だと思います。インターネットで何でも買える時代がやってきて、お店の存在意義が問われているところでもあります。
服作りに関わっているオンワード樫山の紳士服ブランド「五大陸」の仕事で、各都市の店を訪れ、服の語り部である店頭に立つ方たちと物に向き合う姿勢を熱く伝えています。皆さまもどうぞお立ち寄りを。
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Posted by インコントロ STAFF at 13時05分 コメント ( 0 )