2014年06月07日(土)
朝日新聞be on Saturday " 赤峰幸生の男の流儀 " ルチアーノ・バルベラのこと 2014年6月7日(土)掲載" [朝日新聞掲載記事]
イタリアに、ルチアーノ・バルベラという男がいます。ウェル・ドレッサー(装いの達人)として知られ、日本のメンズファッション誌にもしばしば登場する古くからの友人です。
五つほど年長の彼とは、会えばいつも「男は身に着けるものをいかに選ぶべきか」と意見を交わします。英国を源流とするクラシックなスタイルを、彼はイタリア流に、私は日本人としてかみ砕くことに腐心しているわけですが、自然から色合わせを着想していることや、服は長く着込んでこそ味わいが出ると考えていることなど、共通点がたくさんあります。
とりわけ印象的なのは、ドレスコードに関する彼の知見です。ともすれば崩れがちな現代の装いについて、彼は「自由のはき違えだ」と言います。カジュアルフライデーだなどと言って、ラフな格好で仕事をすることが「いったい男にどんな成長をもたらすのか」と批判するのです。
男にとってのドレスコードとは、「場への敬意」や「会う人への敬意」。何よりも「アグリードレッシング」(周囲から同意が得られる装い)が重要だと考えるのです。
ただしそれは没個性を意味しません。スーツにネクタイを締めるという基本スタイルの中で、どんなタッチの生地を選ぶのか、前合わせはシングルなのかダブルなのか、ネクタイとシャツはどう組み合わせるのか。そうしたあらゆる要素が個性を形作っていきます。
人はだれも固有の魂をもつ存在であり、おのれの人生の主人公。毎朝始まる新しい人生を生きるために、きょうはどんな服を身に着けるのか。決してゆるがせにせず、エレガントでありたいと考える姿勢が、彼のオーラとなってにじみ出ています。
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Posted by インコントロ STAFF at 09時00分 コメント ( 0 )