2006年07月24日(月)
OCEANS 9月号 連載#6 [OCEANS掲載記事]
King of Elegance
マエストロ赤峰の
「粋がわかれば、すべてがわかる」
夏のスニーカーの「粋」
ファッションにはある種の方程式がある。自分に似合う、似合わないを見分けるのはセンスに委ねられるが、(注1)正比例な着こなしを実践する分には道を間違える人はあまりいない。ドレスアイテムとドレスアイテムを合わせれば、答えは必然、ドレッシーに導かれる。しかし、私は反比例的な着こなしを好む面がある。ドレスアイテムとスポーティーアイテムの組み合わせだ。そして、その夏バージョンとしての具体例のひとつが、スーツとスニーカーのハーモニーである。
端的に言えば、スーツのドレスダウン。ポイントとなるのは首元と足元で素肌を露出して、開放感を演出することである。首元はアンタイドでシャツ、もしくはポロシャツを合わせれば問題はないだろう。次は足元だ。選択肢にはレザーのスリッポンが最近の傾向。しかし、私は好まない。素足で履くのは、足にガマンを強いることになるからだ。素足のように見せかけるショートソックスは論外。私の答えはキャンバススニーカーだ。ダラしなくならず、キチッとしながらもくだけている。そんな印象がよい。(注2)ポルトフィーノやカプリの格式あるリゾートにあるホテルで日中を過ごすときの着こなしだ。(注3)スーツにスニーカーを合わせることは、ハズレではない。ハズレとは、やはり、これ見よがしで目立つことが念頭にあり、スニーカーによるスーツのドレスダウンは、実は比例的な着こなしのアレンジ。反比例的な着こなしでもあるが、見事にハーモニーを奏でている。それゆえ、とても粋だ。(注4)なんでもありなカジュアルではなく、スポーティシックとでもいえよう。
スニーカー選びのポイントは3つ。第1は、キャンバスであること。キャンバスはナチュラルで、清涼感があり、履いていくほどに味わいが深くなる。そして第2は、ルーツといえる王道的なモデルを選ぶこと。私の場合では、(注5)コンバースのオールスターとスペルガの2750がそれである。第3は、カラーは(注6)モノトーンに限る。この3つのポイントを押さえていれば、どんなクラシックなスーツに合わせたとしても、決してハズしにはならない。むしろ、粋とは何たるかを知っているからこそできる、夏のスーツの手練手管なこなし方の好例だといえるだろう。
(注1) 「正比例的な着こなし」
ルールが存在するスーツの世界では、正比例的な着こなしと、反比例的な着こなしがあり、そのどちらも正しい着こなしという理解を持つといい。
(注2) 「ポルトフィーノやカプリ」
イタリアの代表的なリゾート地。
(注3) 「スーツにスニーカー」
赤峰氏曰く、スーツにスニーカーを素足で履くのは、ドレッシーなマインドでのクールビズ。そして感覚的には、日本での着物と下駄の関係性に通じる。
(注4) 「なんでもあり」
カジュアルとドレスダウンは似て非なるもの。最近のカジュアルは、ルール無用なハズしが多い。例えば、スーツにサンダルとか・・・・・・。
(注5) 「コンバースのオールスターとスペルガの2750」
特別にデッドストックなどにこだわらず、現行品を愛用。キャンバススニーカーは、履き潰しては買い替えることを繰り返している。
(注6) 「モノトーン」
生成り、黒を基本として、ネイビーやグレーなども含める。
素足にキャンバススニーカーでスーツをシックにドレスダウン
左は11年ほど前にイタリアはミラノにあるサルト、リベラーノ&リベラーノにて仕立てたグレーストライプのダブル6ボタンスーツ。白のオックスフォードのレギュラーカラーシャツをアンタイドで合わせ、赤のドットシルクチーフを効かせ、足元にはコンバースのグレーキャンバススニーカーを合わせている。このスニーカーの選択がスーツに対して反比例的であり、正比例ならば黒のストレートチップを合わせる。
こちらでは上写真と同じくリベラーノ&リベラーノで13年程前に仕立てたグレーストライプの3ボタン段返りスーツに、ラコステの黒のロングスリーブポロを合わせている。襟をナチュラルに立て、ボタンを2つ開け、裾をパンツの外に出すのが赤峰流のこなし。足元はコンバースの白キャンバススニーカー。
1965年、マリブにあるコテージにてくつろぐ、英国の俳優、ジェームス・フォックス。ジャケットでドレスアップしながらも、素足で過ごす感覚が粋。
資料は、赤峰氏所有のフォトグラファー ウィリアム・クラクストンによる写真集「PHOTOGRAPHIC MEMORY」より。
Posted by インコントロ STAFF at 00時00分 コメント ( 0 )