2008年12月24日(水)
OCEANS 2月号連載 AKAMINE STYLE 目覚めよ、日本の男たち! [OCEANS掲載記事]
マエストロ赤峰の「オトナ相談室」
仕事、家庭、子育て、そして愛・・・・・・などなど。
30〜40代のオーシャンズ世代にもなれば、少なからず何かしら悩みのタネは持っているもの。
そんな皆様の“駆け込み寺”として開設されたのが、このオトナ相談室。
皆さんの質問にお答えするのは、“人生のマエストロ”こと赤峰幸生氏。
今月も痛快なご意見で迷えるオーシャンズ読者に救いの手を差し伸べてくれるハズ!
では皆さん、ご一緒に! 教えてっ、マエストロ!
今月のテーマ
“超不況”
[今月の質問]
はじめまして。毎月この連載を楽しみに読ませていただいております。私は銀行員をしておりますが、周知のことではありますが、昨今は業界を問わず業績はとても厳しいことと思います。メディアでは「大不況」の前に「未曾有」という言葉が用いられるほど経済は深刻な事態に陥っています。会社では呪文のように経費削減という言葉が飛び交い、それでもやっぱりマイナス成長が続く。株価は下がり、ものは売れない。いったいいつまで続くのかと不安な気持ちでいっぱいです。そこで赤峰さんにぜひお尋ねしたいことがあります。まさに到来してしまった“超不況”の時代を、どのような気構えで乗り越えていけばよいのか教えていただきたいと存じます。よろしくお願いします。(37歳・東京都在住・大手銀行勤務・K.M.さん)
Q.うわぁ、これまた壮大なテーマ!不況の乗り越え方ですって。僕も答えを知りたいです!マエストロ、早く教えてっ!
てめぇは大ばか野郎かっ!ピーチクパーチクとわめきやがって。いつもいつもすぐ答えを求めやがる。てめぇの頭でものを考えるってことを知らねぇのか!まぁとはいえ、お前のようなうすらとんかちですら、この不況を肌で感じ取っているくらいだ。世の中の人々にとって深刻な問題であることは事実だろう。アメリカのリーマンショックに端を発した金融危機は大変なスピードでグローバルに進み、世界経済は混乱状態にある。日本経済も例外ではなく、文字どおり危機的状況を迎えている。周知のとおり、業界を問わずサブプライム問題の影響は大きい。本来であれば、この危機を乗り切るためには、国民を主導する強いリーダーが必要だ。しかしながら、先のアメリカ大統領選に勝利したバラク・オバマ氏の存在とは対照的に、我が国には今、よきリーダーがいない。コロコロと首相が代わる異例の事態に加え、最近はというと、度重なる麻生氏の失言騒動を機にその求心力の無さが一気に露呈した。矢継ぎ早に金融対策を打ち出す欧米と比べ、そうこうしているうちに日本は二歩も三歩も遅れをとっている。民間に元気のなくなった今こそ、政府の出番である。しかし、こんな状況になっても、官邸主導の国家戦略がまるでない。この不況のど真ん中で、我々が頼ることができるものは何もひとつない。そう、これは紛れもなく未曾有の危機である。
Q.ええっ!何ということでしょう。これじゃあ、国民は孤立無援・・・・・。こんなときはマエストロ、じゃんじゃん株に手を出し、将来に備えるべきなのですね!
てめぇは、本当に「超」が付くほどのばか野郎か!そうだ。“超ばか”野郎だ。何がじゃんじゃん株に手を出し、だ。まったく開いた口が塞がらねぇとはこのことだ。この不況を生んだ原因をちっとも理解していないのだな。まぁよい。お前が理解しているようなことなら、そもそも世の中はこんな混乱には陥ることもなかっただろう。誤解を恐れずに言えば、ファンドビジネスはあんまりいいもんじゃない。資産運用と言えば聞こえはいい。しかし、それは根本的にパチンコや競馬などの賭博となんら変わらない。そもそも、稼ぎとはあなたが汗水垂らして働いた、その対価であるはずだ。しかし、人は時として何の苦労もせずに金儲けができる、そんな儚い夢を抱きがちだ。それを否定するわけではないが、そんなことがまかり通るほど、この世の中は甘くない。つまり、そんな稼ぎ方は、私に言わせれば「分相応」の稼ぎ方ではないのだ。「分相応」つまり、「身の丈」である。洋服を語る際にもよく使う言葉であるが、何事にも身の丈というものがある。稼ぎ方にも然り、である。この不況を肌で感じて言えるのは、国家、企業、そして個人すべてが「長い間、身の丈に合わない悪い夢を見てきた」ということだ。結局、この不況が到来するまで誰一人として目を覚まさなかった。今もなおその夢を見続けている愚かな者も少なくないのではなかろうか。だからこそ、私はこんな輩にこう言いたい。「いい加減に目を覚ましやがれ、このばか野郎!」と。
(→)世界を覆い尽くさんとする不況という名の暗い闇。まるでその闇に転がり落ちていくように、株価は今日も低迷を続けている。この日はマエストロを、東京駅付近にある株価のチェッカーボードの前でパチリ。そして、偶然にもチェッカーボードの向かいにあった宝くじ売り場には、この「超不況」を象徴するかのような長蛇の列。そんな光景を奇しくも目の当たりにしたマエストロは、その先にいったい何を見たのでしょう。
Q.なるほど・・・・むにゃむにゃ・・・・。僕らは悪い夢にうなされていた。今こそ目を覚まさないと。でも、もう少し、寝させて・・・・むにゃ・・
てめぇ、この野郎がっ!オレの話を聞きながら居眠りをするとはまったくいい度胸をしてやがる。お前はいつもそうやって、私の言葉の“重み”を台無しにしてしまう。そんなに、オレの話が退屈かっ!いいかげんに目を覚ましやがれっ!このばか野郎がっ!まぁ、そうは言っても今この国はそれほど深刻なのかもしれないな。おそらく、多くの人々がこうやって寝ぼけているのだろう。業績の振るわない企業がその典型的な例である。ご存知のとおり企業はそのほとんどが、来期の目標やその達成度合について考える際、“昨年対比”を基準にする。数値的な検証しかしないのだ。それも何の疑いもなしに、である。それが常識なのだ。しかし、そもそもその判断基準は正しいのか、それを疑うことが必要だ。それがないから、手段を問わない売り上げ至上主義の経営戦略が行われ、企業はその力以上の売り上げを記録してしまう。そして、それが昨年対比の基準に加味されていくのだ。企業が「身の丈以上」の経済活動を繰り返していくとどうなるか。それは日本経済の現状を見れば明らかであろう。そんなふうにして、企業は元気を失い、弱りきっている。そして弱りきったその体に、何の戦略もなしに経費削減というムチを打ち続ける。これではあまりに酷すぎないか。だからこそ、企業にはこれまでの常識に捕らわれない、経済活動が必要なのだ。ということは、である。我々個人それぞれに求められることも自ずと見えてくるはずだ。
未曾有の不況を乗り越えるために、最も必要なこととは、「己の身の丈を知り、いかに慎ましく生きるか」である。そのために、“自立”という“成熟”が求められていると言えるだろう。
Q.“自立”という“成熟”ですか。それは難儀な時代ですねぇ。でも、そんなこと言ってられません。マエストロ、目が覚めましたよ!
遅いっ!てめぇはようやく目を覚ましやがったのか。まぁ、よい。そもそもお前にはあまり期待していないからな。そんなことよりも、具体的な話を進めるとしよう。既述のとおり、「慎ましく生きる」ために我々には“自立”という“成熟”が必要だ。
まず考えなければならないのが、己の価値を検証し続けることだ。これは、自分がいったい何者かを問い続けることでもある。例えばそれは、会社員としての自分の存在や仕事が、世の中の人々の役に立っているのかどうかを問うことでもある。私とて、自身のものづくりを通して、いかに会社の売り上げがよかろうが、常に(どういうかたちであれ)皆さまのお役に立てているかを自問するようにしている。仮に業績面での成功を収めようが、決してつけ上がるようなことはない。そうやって真摯な気持ちを持ち続けることが、己の価値を高めることにつながると信じているからだ。
自分自身の価値を自問するということは、つまり現在のあなたの収入が、本当にふさわしいのかを自問することでもあろう。過大評価するのも、過小評価するのもいけない。それは会社としても同じ。真摯な態度で自社の売り上げをもう一度見直してほしい。それが本当に会社の価値=「身の丈」にふさわしいのか。考え抜いたうえで目標を立て、そして全身全霊で実行していくのだ。一時の難をしのぐためのカンフル剤的対策など御法度だと心得たい。この不況時において、対症療法など意味をなさないのだ。しかし、会社とは組織である。もちろん組織の中には、抜本的な変革を意味する原因療法に対するさまざまな障害があるだろう。しかし、それにくじけてはいけない。これからの時代は“寄らば大樹の陰”ではいけないのだ。誰かに頼るという甘い考えを捨て、たとえ独りであっても己が先に立ち行動していくことが求められる。既成概念に捕らわれず、ゼロベースで考えていく力と勇気が求められるのだ。この強い信念こそが、我々に求められている“自立”であり“成熟”の源となるのだ。
Q.己に対する真摯な評価、そして既成概念に挑む勇気ですか。マエストロ、さすがですっ!
ふむ。ようやく、理解したようだな。己に対する真摯な評価と既成概念に挑む勇気があれば、自ずと道は開けよう。前者はあなたに、いかなる困難であろうとそれをこらえきる揺ぎない精神を、後者はそれを打破するための最も効果的な方法をもたらすはずだ。「身の丈」とは決まりきったものではなく、そうやって日々成長させるもの。この“超不況”の時代に立ち向かうために、己の価値を高めていこうではないか。かつて「アメリカがクシャミをすれば日本は風邪あるいは肺炎になる」という、我が国を揶揄する言葉があった。そんな時代に今こそ別れを告げるべきだ。さあ、今こそ襟を正そうではないか。オバマ氏ではないが、我々日本人は今こそ“自立”という“成熟”を果たす時なのである。何者にも身を委ねないこと。我々ががこの不況を乗り越えられるかは、己の足で立つことができるかどうかにかかっている。
−近ごろのマエストロ−
夢中になって読み進めている書籍の中に「おいしさの表現辞典」(東京堂出版)というものがある。これは、「甘い」「酸っぱい」「苦い」「うまい」などの基本的な表現から「すっきり」「まろやか」「香ばしい」などさまざまな感覚表現まで、おいしさの表現を集大成したもので、気の利いた言い方をしたいというときに役立つ味覚表現の辞典である。味覚に対する表現の多さに驚きながら読み進めている。食事をしたときに「うまい」というひと言で片付けるのは簡単だ。しかし、それを異なる言葉で表現することに、“心の豊かさ”を感じてしまうのだ。私はこの本に出会って、言葉や表現というものに繊細になるということの大切さを改めて思い知った気がする。
■みなさんからの質問待ってます!
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Posted by インコントロ STAFF at 00時00分 コメント ( 1 )
コメント
>我が国には今、よきリーダーがいない。コロコロと首相が代わる異例の事態に加え、最近はというと、度重なる麻生氏の失言騒動を機にその求心力の無さが一気に露呈した。矢継ぎ早に金融対策を打ち出す欧米と比べ、そうこうしているうちに日本は二歩も三歩も遅れをとっている。
麻生首相のどの発言を持って”失言”とされているのでしょうか?また、米国の金融政策に比べ、日本はどの点で二歩、三歩遅れているのでしょうか?具体例を提示してください。上記の発言はかなり無責任かつ、不勉強を露呈するものだと思います。