AKAMINE BLOG

メンズファッションディレクター 赤峰 幸生のBLOGです。

2008年04月24日(木)

OCEANS 6月号連載 AKAMINE STYLE 目覚めよ、日本の男たち! [OCEANS掲載記事]

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マエストロ赤峰の「オトナ相談室」
仕事、家庭、子育て、そして愛……などなど。
30〜40代のオーシャンズ世代にもなれば、
少なからず何かしら悩みのタネは持っているもの。
そんな皆さまの“駆け込み寺”として開設されたのが、このオトナ相談室。
皆さんの質問にお答えするのは、“人生のマエストロ”こと赤峰幸生氏。
今月も痛快なご意見で迷えるオーシャンズ読者に
救いの手を差し伸べてくれるハズ!
では皆さん、ご一緒に!教えてっ、マエストロ!


今月のお悩みキーワード
“父と子”

[今月のお悩み]
毎号「大人相談室」を拝読しております。ところで赤峰氏にお子さんはいらっしゃるのでしょうか?結婚して2年目に授かった我が子は、この春、小学校に入学します。そこで子育てについて、マエストロの意見をお聞きしたいのです。私の父は厳格な人でした。しかし、私は子供を叱ることが上手くできません。甘やかしてばかりです。父と子の理想の関係について教えてください。(36歳・神奈川県在住・医療関係会社勤務T・Sさん)

 

Q.今や父親の、かつての威厳は失われました。時代は男性に、家事のできる心優しい主夫としての素質を求めているのですっ!
 てめぇ、このへっぽこやろう!何でも時代のせいにするな!お前のような輩ばかりだから、日本がどんどんだめになっていくのだ。私が子供だった自分と今では時代背景がずいぶんと変わった。女が家にいて、男は外で働くという形態ではなくなった。女性の社会的地位が向上したという意味では素晴らしいことだが、だからといって男が家庭のことだけを任されていくことはいかがなものか。それは仕事をバリバリやって亭主関白になれ、ということではない。私も子供を持つ父親であり、掃除もするし洗濯もする。しかし、女化しているわけではない。父はあくまでも男であり、昔も今も父と子の関係に違いなどないのである。
 現代の親は子供に過剰にかまいすぎだ。まるで、腫れものにでも触るような扱いだ。子育てにさえも“事なかれ主義”がまかり通っている。子供の機嫌をとることが、いい父親だと勘違いしていないだろうか。子供を叱れない心優しい父親だと?それで子供が立派に育つわけがないだろう。子供をしつけるのは誰の役目だ。彼らのためになることは何なのか。そんなことは改めて言うまでもない。

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(→)とある休日の昼下がり。なんとこの日は、自宅からほど近い多摩川で「ザリガニ獲り」に興じるマエストロを発見!自称ザリガニ獲り名人と語るマエストロは、まるで洋服の生地を見るかのような鋭い眼光でザリガニを探索。その腕前は確かなもので、シーズン前にもかかわらず見事に捕獲に成功!この日出会った、小さな命は「オーシャン君」と名付けられ、今日も元気に編集部で育てられています。

Q.なるほど。おっしゃるとおりですね。では、マエストロが実際にお父さまにどのように育てられたのか教えてください!
 かつて自分の受けたしつけは、その良し悪しは別として、我が子へのしつけのベースになる。私の父は旧農林省に勤務し、地理の研究者だった。酒豪で無口。日曜日になると剣道の稽古で、ずいぶんと鍛えられた。作法にも厳しく、食事中に足を崩したり肘をついたりすると、容赦なく叩かれたものだ。ある日、遊び疲れた私が食事中に居眠りをしてしまった際などは、家から放り出され、泣けどもわめけど許してもらえなかったものだ。その夜、犬小屋で飼い犬を抱いて寝たことを今でも覚えている。正月のおせちは父が箸をつけるまでは誰も食べない、そんなことがごくごく当たり前の時代だった。何しろ、私は父のことを「お父さま」と呼んでいたくらいであるから。ともかく、父にはそれくらい威厳があった。無論、それはそういう時代であったからで、それがそのまま現代に通じるとは毛頭思っていない。しかし、私の今の生活態度はすべて父から学んだ。無口ではあったが、父の背中は実に多くのことを雄弁に語っていた。今思えば、どの家の父親よりも、そうやって無言の会話を交わしていたのだと思う。
 教育方針は子供の得意なことを伸ばすものだった、と思う。私は絵を描くことが好きで、小学校に上がると絵画教室に通わせてもらった。やらされたのではなく、やらせてもらったのだ。今の親が自分たちの都合で、子供と接する時間をできるだけ少なくするための、時間稼ぎ的な習い事とはわけが違う。絵画を幼少の頃に学んだことは、その後の人生に色濃い影響を及ぼした。19歳のときには(注1)ピエール・カルダンにデッサンが認められ、パリのアトリエで修業を積むために渡仏する運びとなった。しかし、その直前に父が他界。経済的な理由もあり、渡仏を断念する運びとなった。それでも服飾の仕事に携わるうえで、どれほど絵を学んだことが役に立っているか。休日に時間さえあれば、今でも絵を描くことがある。海外に行ってもスケッチをする。そのときどきに、私は父から受けた恩恵を改めて思い知らされる
 今はいい学校に親が入れたいために、進学塾に通わせる。子供の教育を他人任せにアウトソーシングしているのだ。とりあえず、有名な大学に行かせたい。だがそれは所詮、まやかしにすぎない。とりあえず大学を出て、それがいったい何になるのだ。それよりも何よりも、我が子が何をやりたいか、どんなことに興味を持っているかを、一番近くにいる親が知らねばならない

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Q.では、マエストロはお子さんにどのような「服育」をされてますか?もちろん“お洒落さん”なんですよね?
 馬鹿やろう!相変わらず、お前の質問はなんて稚拙なのだ。私は子供をお洒落に着飾ろうなどと、微塵にも思わない。最近では子供服の高級化が進んでいるようだ。雑誌でもよく目にするようになった。しかし、チャラチャラと親の身勝手で子供を着飾るのは、まるで子供をペットと勘違いしているかのようだ。子供を見せびらかしのための道具にすることだけは避けたい。私は子供に必要以上の贅沢をさせない。着させる服はなるべくベーシックを心掛ける。普通でちゃんとしている、それが子供らしい服と言えるのだ。高価な服でなくとも、「服育」はできる。どういうことか。平たく言えば、日常のT.P.Oを肌で覚えさせるのだ。どこかに出かけるときには、その場所と時間に合った服装がいかに自分だけでなく周りの人を心地よい気持ちにさせるかを子供のときから肌身で知ってほしいからである。私の幼少時代、正月になるとまっさらな白の下着が用意されていた。新年の始まりを身ぎれいに迎えるためだ。これは、日本らしい風習のひとつであろう。日本には洋服の文化がない。などという私の言葉と矛盾するが、これはT.P.Oに合った装いを考えるうえで、とても重要な意味を持つ。私自身、今でもそのことをきちんと憶えている。そして、私も子供に同じことを実践している。お洒落がどうこうではない。もっと根本的な服のあり方を教え、そこから生活態度のあるべき姿を理解させる。それが、しつけというものであろう。

Q.では、失われた威厳を取り戻すための、マエストロならではのとっておきの「子育てのコツ」を教えてください!
 てめぇ、コツを教えてくれだと?ふざけるのもこれを最後にしやがれ。子育てにコツなどあるものか。それに子育てとは千差万別。親になって初めてわかる、正解はひとつではない。だが、あえて私なりにアドバイスを送るとすればこうだ。「自分もかつては子供だった」ということをいま一度考えろ。子供の身長が80cmであれば、その高さの目線になれるかどうかですべてが決まる。森でも川原でも公園でも家の中でも、どこであれ、子供の目線になれば目の前の世界が変わり、そこで初めて見えるものがあるのだ。子供に対して、過剰なかまい方をするあなたは、「自分の高さ」からだけで子供と対話していないだろうか。教え導くことにのみ過剰な責任を感じていないだろうか。だとしたら、一歩引いて考えてほしい。親は子供から多くのことを学ぶ。教えているつもりが、実は自分が教えられている。子育てとはそういうものだ。子供の五感は鋭く、感じたことをストレートに話す。おいしいものには素直においしいと言い、おいしくなければ、素直にそう言う。面白いことには自然と目を輝かせる。そこには何の損得勘定もない。大人が忘れてしまっていることを子供が教えてくれる。子供から親がしつけられることは、ことのほか多いのである。子供の教育に迷ったら自分が子供だったことを省みることだ。そして、必ず「子供の高さ」で対話すること。子供のころに観た、映画「(注2)ベルリン・天使の詩」や「(注3)赤い風船」は、大人になって改めて観ると、また違った見え方をするものだ。幼少時代の気持ちを思い返せば、自ずと子供との接し方も変わるはずである。
 だが一方では自分が子供にとって、お手本とならねばならない。食べ方や話し方、そして生き様すべてが、である。子供は親を見て育つ。私が父親から厳しく育てられたように、自分の子供を育てることはない。しかし、私は子供に自分の生き様をありのままに見せる。重要なのは、そこで自分が筋の通った生き方をしているかだ。その生き様に芯があるか、である。父親が自分の人生を誇れるなら、それは子供へと自然に伝わるはずなのだ。女は子供を産み、本能的に女から母親になる。しかし、男は違う。子供を授かったとはいえ、それだけでは父親にはなれない。子供と暮らしていく中で、次第に父親として成長していく。最も大切なのは「子供の目線で子供から学ぶ姿勢」だ。コツではなく、それは心がけ。たったそれだけで、目の前の世界は変わり、子育ても変わる。そうすれば、父親の威厳を取り戻すなど造作もない。


 
(注1) 「ピエール・カルダン」
フランスのファッションデザイナー。前衛的なスタイルでオートクチュールブランドを立ち上げ、1970年代に一世を風靡した。


(注2) 「ベルリン・天使の詩」
ヴィム・ベンダース監督による、1987年公開のフランスと西ドイツの合作。ペーター・ハントケ原詞の「わらべうた」が冒頭に流れる。


(注3) 「赤い風船<」
アルベール・ラモリスの脚本、監督作品。1956年カンヌ国際映画祭グランプリを受賞した、同脚本、監督による「白い馬」と併せて、今年の7月にシネスイッチ銀座にてリバイバル公開される。


 
 

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−近ごろのマエストロ−
「世の中、リスクのたらい回しが日常的だ。イージス艦、暫定税率問題に関しても然り。責任の所在が明確ではなく、なんでも曖昧にする。俺がやらなくて誰がやる、という骨のある政治家がいない。筋が通っていないのだ。私は自分が作る服には責任を持つ。自分の生き様をかけた、芯のある服を作る。奇抜なことは一切しない。普通に見えて、ただの普通ではない。そんな服だ。近ごろの世相を感じるにつれ、筋の通った生き様の男が少なくなっているのではないかと不安に思っている」

■みなさんからの質問待ってます!
仕事から家庭、恋愛、そしてファッション・・・・・・etc.、日ごろ読者のみなさんが抱える悩み、疑問など、相談したいことをなんでも教えてください。マエストロ赤峰がズバッと解決いたします!インターネットの場合は[ www.oceans-ilm.com ]へアクセスのうえ、「NEWS」から投稿してください。郵送の場合は官製ハガキに @相談したいこと A氏名(ふりがな) B住所 C年齢 D職業 E電話番号 Fメールアドレス G「オトナ相談室」への感想 を明記し、〒162-0825東京都新宿区神楽坂6-42 オーシャンズ編集部「オトナ相談室係」まで。

Posted by インコントロ STAFF at 00時00分   コメント ( 0 )

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