2006年04月24日(月)
OCEANS 6月号 連載#3 [OCEANS掲載記事]
King of Elegance
マエストロ赤峰の
「粋がわかれば、すべてがわかる」
フィレンツェ的な「粋」
シックな装いとは?という命題に対して、私は自分自身の毎日の着こなしで答えを出している。しかし、それを言葉で伝えるのは難しい。人の振りを見て我が振り直せ、と言うが、それがシックな装いを知るための近道ではないか。そのためには、良きお手本を見つけることが大事だ。私は年に幾度もイタリアへと赴き、多くの服飾関係者に出会うが、その中でも群を抜いてシックだと思う人物がいる。それはフィレンツェでテーラーを営む、(注1)アントニオ・リベラーノ氏だ。今回、旧知の仲である彼とシックについて語らった。
赤峰 日本人がシックに装うためにアドバイスをしてほしい。
アントニオ 私はテーラーだから、顧客がオーダーに来たら、観察と会話でベストを探る。その経験から導いた基本ルールは4つ。1.自分に似合う色を知る 2.シャツとタイのハーモニー 3.靴とベルトのハーモニー 4.いつ、どこへ行くのか? これらはすべて当たり前のことだが、実践できている人はひと握り。また、着こなしの色は2色の範囲でまとめ、(注2)3色目は小さい面積で使うのがコツ。だが、地味ならいいということではない。ピンクだってシックにこなせる。派手にして、目立とうとするのがよくないだけ。
赤峰 その通り。これ見よがしとは、意識の問題でもある。そして、人を真似るのが、シックを身に着ける近道だと言ったが、それが自分に似合うのか判断することも大事。ジャケットの丈、裾幅などは人それぞれ身長によって適した長さが違う。
アントニオ 確かに、スーツには(注3)黄金律がある。されど万能ではない。だから、私はひとりひとりの体に合うようにアレンジする。シックに装うには、ジャストサイズが前提だ。
赤峰 私はアントニオが暮らすフィレンツェ的な着こなしを好む。カンパーニャ(田舎)の自然景観が影響し、ナチュラルな色合いや風合いが好まれ、落ち着いていて品がある。ミラノ、ナポリ、イタリアは都市によって着こなしのテイストが異なる。イタリアンクラシックの中でも、フィレンツェ的なこなし方に粋を感じるのは、そうしたわけだ。
(注1) 「アントニオ・リベラーノ」
前号でも紹介したリベラーノ&リベラーノの当主でありテーラー。フィレンツェにアトリエを構える。日本ではユナイテッドアローズ原宿本店 メンズ館にて既製品を扱い、年2回オーダー会も行う。
(注2) 「3色目は小さい面積」
スーツとシャツは面積が大きいのでベーシックカラーが基本。面積が小さいタイやチーフで色を挿すのが、シックな装いのテクニック。
(注3) 「黄金律」
ジャケットの留めるボタン、2ボタンなら1個目、3ボタン段返りなら2個目のボタンの位置は、ウエストの一番くびれているところに合わせる。アントニオ氏は、そんな基本を踏まえ、パーソナリティに合わせて調整を加える。
アントニオ氏のVゾーンは控えめなカントリー・シック
ブラウン千鳥格子のジャケットをパンツとのセットアップではなく、3ピースでもなく、ベストとの2ピースでこなしているのが洒脱。Vゾーンはブルーを基調とし、タイの素材感がジャケットと絶妙なハーモニーを奏でる。足元はブラウンスウェードのチャッカブーツ。まさに、フィレンツェ的な粋を感じさせる品のあるカントリールック。
赤峰氏のVゾーンは、色数を抑えながらも個性が際立つ
取材当日の赤峰氏は、全体に寒色系でまとめたコーディネート。グレーのスーツにブルーストライプのシャツを合わせ、タイはブルー系のボーダー、チーフはブルー系のドット。色数は2色に絞りながら、タイとチーフを効果的なアクセントとしている。だから凡庸にならず、メリハリがあって、シックに見えるという手練な算段。
Posted by インコントロ STAFF at 00時00分 コメント ( 0 )